妙な電話があったのは、その翌日のことだった。昨日とは打って変わって、冷え切った空気が頬を刺すような夜に、その電話はあった。父を名乗る声が、「元気にしてるのか」と言った。数年ぶりのあいさつのような声を聞きながら、僕は居間で晩酌をしている父を見た。冷たい汗が背中に流れた。なぜか聞かれてはいけないような気がして、僕は耳に受話器を強く押し当てた。父を名乗る声は、一通り当たり障りのない話をした後で、「お父…
[連載]寂しがり屋の森
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小説『寂しがり屋の森』【第4回】村松 凪
「お父さんは女の人と一緒に暮らしているようだけど」父の職場の女性からそう伝えられ、突然頭を殴られたような気持ちになり…
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小説『寂しがり屋の森』【第3回】村松 凪
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小説『寂しがり屋の森』【第2回】村松 凪
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小説『寂しがり屋の森』【新連載】村松 凪
透明な顔、それが鈴木君のありのままの顔だった... だれもが、やりたくてやってることばかりじゃない