【前回の記事を読む】学校長との食事へ、明かされる学校開校への苦労の道のりとは…

国田克美という女

女将が部屋に入ってきて、

「村山先生、オコゼの唐揚げですよ」

と言うと、焦げ茶色の小さな籠の中に(わけ)()の微塵切りが入っているのを見て村山は国田に対して、

「この籠も食べられるよ」

と言ったら、国田は、

「えっ!」

と少し大きな声を出した。

ポン酢の垂れの中に、分葱を入れて、細く切った昆布で編んで唐揚げにされた籠を村山は口に入れてカリカリと美味しそうに食べてみせた。国田もそれを食べて、

「美味しい!」

と思わず声を出した。

「本当に美味しいのはオコゼの唐揚げだ」と言うと村山はオコゼのひれも骨もパリパリと食べ始めた。

国田は酒は飲めるが、今日のところは遠慮して、ビールをコップ二杯半に留めて烏龍茶を注文した。二人は約一時間半にわたり、四方山話をし、楽しく過ごしたのであった。今日の昼食会で、国田は村山が後ろ盾になってくれることがわかり、急に胸が熱くなるのを感じた。