【前回の記事を読む】自分の名前がやけに聞こえる「カクテルパーティー効果」の原因

カクテルパーティー効果

「やまも」が発音されたあとで、「やまも」が聞こえることの理由は、次のようです。

つまり「やまも(と)」と発音された時点で聴覚として意識されていなくても、その音声は鼓膜から脳の聴覚皮質に送られ、情報処理されているのではないかと考えられるわけです。実はこの時点で1回「やまもと」と聞こえた(耳には入っていた)はずと考えられるのですが、他の人との会話に注意が向いていて、そちらの音声には注意が向いていなかったために聞こえとしてはほとんど意識されていなかったと考えられるのです。

そしてこの直後(またはほとんど同時?)、それが自分の名前(自分にとって重要な情報)であることが認識され、注意が向いて、それが急にはっきりと、あたかもはじめからしっかりと聞いていたかのように、「やまもと」と聞こえるということとなると考えています。つまりこの時点ではっきりと聴感覚として意識されることとなるわけです。

この際の順番をもう一度考えますと、まず「やまもと」の音声が情報処理されたあとで注意が向くと考えられるわけですが(ほとんど同時かもしれませんが、注意の転換のほうが順番としてはあとになると考えるのが妥当かと思います)、この際にその「やまもと」の音声情報は保存されています(感覚情報保存)。

つまり「やまもと」の音声は鼓膜を振動させ、刺激が聴覚皮質に到達してある程度の情報処理がされていると考えられ、この時点で1回聞こえているのかもしれないのですが、このときはまだ注意が向いておらず、聴感覚としてはっきりとは意識にのぼっていない状態で、次の瞬間に注意が転換されて向けられ(この場合の注意の転換は、自動的で意識にのぼっていないとも考えられます)、そしてその直後の瞬間に「やまもと」と(はっきり)聞こえるということとなると考えられます(保存されていた音声が聞こえてくるということです)。

この一連の過程は、時間にしてほんの一瞬(数百ミリ秒程度)と考えられます。これは、聴感覚情報が脳内で処理され、それがしばらく保存されてから聞こえてくるということで、感覚情報保存、エコイックメモリーの機能が関係していると考えられるのです。

つまり「やまもと」と発音された直後に「やまもと」と聞こえたことになるわけですので、「やまもと」という情報がいったん保存されて、注意の転換のあとに聞こえたということとなるわけです。

この場合、はじめに聞こえた(はずの)ときと、次にはっきりと聞こえたときとは、厳密には時間的な遅れ、タイムラグがあるのですが、実際にはほとんど同時で、タイムラグが感じられないように思います。