俳句・短歌 句集 2022.05.04 句集「八ヶ岳南麓」より三句 句集 八ヶ岳南麓 【第61回】 浅川 健一 八ヶ岳の麓で暮らす医師の、四季折々の俳句集 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 真つ青な空を見てゐる曼殊沙華 大空は麦藁とんぼ整列す 鬼灯をふふみてしばし遠きこと
小説 『恋愛配達』 【第15回】 氷満 圭一郎 配達票にサインすると、彼女は思案するように僕の顔を見つめ「じゃあ寄ってく?」と… 「本業は酒屋で、宅配便はバイトです。ところでさ」ぼくはたまらず差し挟まずにはいられない。「さっきからなんなの、どっち、どっちって?」「だってあなた、ドッチ君だもん」「何、ドッチ君て?」すると瞳子さんは、ぼくの胸に付いている名札を指差した。これは配達者が何者であるのか知らせるために、運送会社から貸与されているものだ。ぼくの名前は以前病室で宴会を開いた時に教えていたはずだが、漢字までは教えていない。…
小説 『レッド・パープル』 【第12回】 そのこ+W 分家と立場が逆転…。だが、嫌がらせをしてきた男が死んでいるのが発見された 戦後四、五年経つころからようやく人も物も回復の兆しを見せ始め、そこへ朝鮮戦争特需が加わって日本経済は息をふき返しつつあった。以前神林の会社で働いていて戦争を生き延びた船員も会社に戻って来た。彼はそれらの元船員を米軍の運搬船に貸し出した。彼は地元の信用金庫に融資を頼んだが、担保が少ないという理由で貸し渋られていた。窮余の策として目を付けたのは、同じ鶴前の海運会社を経営する乾(いぬい)芳雄(よしお)…