俳句・短歌 句集 2022.05.04 句集「八ヶ岳南麓」より三句 句集 八ヶ岳南麓 【第61回】 浅川 健一 八ヶ岳の麓で暮らす医師の、四季折々の俳句集 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 真つ青な空を見てゐる曼殊沙華 大空は麦藁とんぼ整列す 鬼灯をふふみてしばし遠きこと
小説 『泥の中で咲け[文庫改訂版]』 【第7回】 松谷 美善 母さんが死んで、一人で生きていかなければならなくなった。高校中退後、月6万円での生活。お墓も作れず母さんの骨と一緒に暮らした 一日中、使いっぱしりをして、クタクタになって部屋にたどり着き、買ってあった少しの菓子を貪り食うのもそこそこに、重たい泥のようになって、布団代わりの寝袋に潜り込む。小さい頃から運動習慣のなかった俺には毎日が、筋肉痛が出るほどキツかった。毎朝、四時に目覚ましをかけて、まだ眠くてフラフラしながら起きる。風呂のついている部屋は、最初からはもらえない。申し訳程度についた小さなキッチンの流し台で、頭を洗って…
小説 『鬼の夜ばなし』 【新連載】 山口 まち 池に映った自分の顔を見た瞬間、少年はすべてを悟った。片側は鬼の顔だった 「鬼」の話をしようと思う。昔から今日に至るまで、繰り返し様々な物語に登場する、なんとも不思議な存在の「鬼」。古代中国の書物には、死者がこの世に帰ってきた姿という記述もある。「鬼」とはいったい何だろう。日本の鬼は、頭に二つの角(つの)、口には牙(きば)、恐ろしい顔と筋骨逞しい肉体を持つ地獄の獄卒がモデルのようだが、もともと鬼に決まった姿はなかった。丸い体に手足が付いているだけだったり、頭が牛や馬だ…