バルセロナにて
ピカソ美術館
十四日早朝のフライトでバルセロナに向かった。昼過ぎにバルセロナに到着。空港からホテルへ向かう間、タクシーの運転手は私の拙いスペイン語によく耐えて会話に付き合ってくれた。
バルセロナはいわゆるカタルーニャ地方の都。スペインからの独立を目指す政治的な動きが活発なところだ。土地の言葉であるカタラン語はスペイン語と少し違いがあるが、町の人は概して外国人の旅行者には親切で分かりやすく話してくれる。おかげでバルセロナ入りは無難にこなすことができた。
ホテルにチェックインし手荷物を置いて、早速最初の目的である「ピカソ美術館」に行くことにした。途中カテドラル教会前の広場に面しているピカソの壁画に感動し写真を撮りまくった。そのあとピカソ美術館に向かったのだが、あっちこっちえらく迷った挙句、随分遠回りをしてしまった。
通りを歩く人に何度も尋ねながら、やっとピカソ美術館のある通りの交差点に行き着いた。その通りの角に古いチョコレート屋があったが、そこのショーウインドウに飾ってあった「一枚の古い白黒の写真」に何気なく目が止まった。
明仁皇太子御夫妻が昭和四十八年(一九七三年)にスペイン訪問の際、この店に立ち寄っていたようだ。店主が差し出したチョコレートをつまむ美智子妃殿下の手(残念ながら御付きの人の影に遮られて姿は映っていない)と明仁皇太子が映っていた。店の内側には店主が明仁皇太子と握手している写真が飾ってあった。きっと私達と同じようにピカソ美術館を訪れたときに立ち寄ったものであろう。
ピカソ美術館はそこから二十mほどの距離にあるのだが、人気の証拠であろう、美術館入口まで長い行列ができていた。中に入るまでに三十分は待たされた。しかし色々の国からやって来た観光客達に交じって、様々な言葉を耳にしながら待つのは楽しかった。だから待たされても全く気にならなかった。
館内では作品の写真撮影は禁止されているが、建物を撮ることは許されていた。ここには私達が最も見たい絵「ゲルニカ」はない。それはマドリッドの「ソフィア王妃芸術センター」にある。ここではピカソの若い時代から幾多の変遷を経て変化していく作品群、つまり「写実的な絵に始まり、新しい画風であるキュービズム、そしてシュールレアリズム」に至るまでの数々の作品がびっしりと展示されている。
「ピカソの生き様」を見ることができる、そんな印象だった。