【前回の記事を読む】「日本の遅れを実感…」男女同権が実現している北欧で見た真実
二〇〇五年 愛・地球博
万博の新エネルギーに感銘
さて、各パビリオンの批評だが、最初は外国館(大陸別に六つのコモンに分類されている)の見学が容易なので、そこから始めた。ヨーロッパ系ではスペイン館の華麗なタイル。イタリア館の文化財「踊るサチュリヌス」。そしてドイツ館の機械に強い国民性による精巧なスぺクタクル「ライド」のディズニーランド的スリルは特に若者に大受けだった。
私の気持ちで面白かったコモンはアジア、アフリカ、南米など発展途上の文化圏で、手作りの生活振りが親近感をもって展示されていた。ネパール館の展示品全部が売り物という逞しさも面白く、アフリカの素朴な麦わら帽は思わず買ってしまった。カンボジア館の機織りの実演は三十分くらい見とれていた。昔の日本が思い出され懐かしかった。
手づくりといえば、長久手日本館に戦後日本の新製品が続々登場したシリーズが、わが国の驚異的経済発展を見事に示していたが、私は数十年前の生活への、もう帰らぬ昔への感傷に胸を締めつけられた。
企業館では、発想の面白さが勝負を決めた。話題のトヨタグループ館の、ロボットたちがトランペットを吹くという技術には驚異的な工夫がなされていると思う。我々人間は金管楽器を吹くと最初は音が出ない。一番難しい楽器だ。これを楽々とこなせるロボットにはどんな仕掛けがあったのだろうか。
三菱未来館は発想も仕上げもよかった。テーマは「もしも月がなかったら」というものだが、内容は感銘を受けるものであった。地球と月とは奇跡的な関連性をもっており、もし月がなかったら、地球は八時間の自転周期になり、強風が吹く殺伐たる環境になって生物もいなくなるそうだ。美しく青い地球は宇宙の中でどんなにバランスのとれた位置を占めているか。見ていて戦慄をおぼえた。
環境設備の商売柄、私が非常に興味を持ったのはNEDO・新エネルギープラントであった。見学ツアーにも二回参加した。京都議定書で地球温暖化をもたらすCO2の除去を目指しているが、新しいエネルギー源がこのプラントに並んでいる。多くは燃料電池を熱源にしているが、全会場の生ゴミからメタンなどを取り出し、燃料として長久手日本館の空調をまかなっているのには大変感心した。
そういえば会場内の多数のゴミ箱は分別され九分割されていた。環境万博から未来都市への展望が隅から隅まで徹底していたのを感じた。