イタリア南北問題
イタリア南部の自然はすばらしい
この日も、真っ青な明るい空。
高速船の三十分は波頭も水平線もここを舞台にした「太陽がいっぱい」そのものである。奇岩のカプリ島マリーナ・グランデでモーターボートに乗り洞窟入口へ着き、手漕ぎボートで入ると行き止まり型の洞穴。太陽光が海底に反射して海水が透明な青緑に輝き、無機質な地中海の聖水という感じだ。たった数分で表へ出た。見る価値はある。
港に戻り、ロープウェイでにぎやかな広場に上った。昼食は名物のモッツアレラのサラダ。付近の雑踏の中、お土産の買い物に最適。ナポリへ帰るとすぐにローマへ向かった。
一四三〇キロの長いバス旅を終え、夕暮れの永遠の都ローマ・トラステベレ地区のホテルに着いた。夕食は名物、サルティンポッカ(子牛肉)のステーキで旨い。
最終日の午前はツアーの人々と別行動で、タクシー(往復二八ユーロ)でテルミナ駅前のサンタマリア・デッラ・ヴィットリア寺院の有名なバロック彫刻「聖テレサ」を鑑賞に行った。ベルニーニの最大傑作で、聖女の法悦をエロチックな表情に刻み、現代人をも喜ばせる。近代彫刻の誕生というべきだろう。
外へ出るとイタリアと思えないビジネスライクでせかせかしたローマの表情に、文明国に戻って来たと感じた。出勤時間の空はミケランジェロ・アントニオーニの名作映画「太陽はひとりぼっち」のモノクローム映画に相応しい雰囲気だ。
ところでこの旅はカトリック圏であり多神教的で日本人に理解しやすい。
イラク・中東問題等で明らかなようにアングロサクソン的一神教、ユダヤ的イスラム的一神教は暴力で血まみれになっている。カトリックや日本の融通無碍が世界を救うかもしれぬ、という説もある(早稲田大学が所有する平山郁夫画伯のキリストvs.マホメットに対する『仏陀の仲裁』の絵で示されるように)。
この旅では、イタリア南部の自然さが良かった。しかも「すべての道はローマへ通ず」とばかりにインフラは古代ローマ以来の伝統で行き届いている。国家財政も消費税率二〇%で安定している。ただしデフレ傾向と少子高齢化は日本と同じ。
ローマは遺跡の街。南部開発派はシチリアあたりに遷都せよと言い出しかねないが、経済の進んだ北部が怒って念願の独立でもしたら大変。やはり自然のままが良い。ただし、現在欧州中で一番の新型コロナの惨状が心配である。早く収束して、人懐こいイタリアに戻ってほしい。