第1章 異変
早速再確認と謎を解き明かす糸口を掴むため、改めて祠を一回りして、おもむろに足元に目を向けると、枯れ草に覆われたこぶし大の丸みを帯びた灰色の河原石が、一面に広がっているのが確認できる。
これと同様の形式は、長崎県の平戸市にある岳埼(たけさき)古墳で本物を見た。その時の感動を思い出し確信した、これは古墳の表面を覆う葺石(ふきいし)である。そうとしか考えられないのだ。さらにここにある葺石は下を流れる川から運び上げた川原石であるとも直感した。
それはその時代に大規模な造営が行われたということになるのだが、付近で古代の住居跡が発見されたという話は聞いた覚えがない。この遺跡の造営に携わった者たちは、いったい何者でどこからきた集団だったのだろうか。これまで見えなかったものが見え出し、同時に疑問も増していく。今遭遇している出来事とこの遺跡の関連性を探るにつれて、次第に遺跡の持つ謎の深さに引き込まれていく明日美であった。
こんにちのような建設機械もない時代に、これだけ大量の河原石を険しい山道を登り、ここまで運び上げることは、想像以上の重労働であったはずだ。それが今、自らが体験したかのように感じられる。
何故なら最近になって、当時のこの場所に自分がいて、過酷な作業に従事していたという奇妙な夢を、度々見るようになっていたのだ。それにともなって古代の人々の喜怒哀楽に思いをはせる時間も多くなっていた。古代人の思いがここにはある。