ロボット
太陽系外に飛び出し広大な宇宙を旅するには、最低でも数千年単位で飛行しなくてはならない。途中で立ち寄る港も無ければ補給もできない。堀内が
「そんな宇宙船になると、そうだな、最低でも舟艇に4千メートルほどの大きさが必要になるな」
織田が
「宇宙に出て生命が自然循環型で維持できるには、もっと大きな空間が必要になるかもしれない。機械式生命維持装置では機械の故障が起きれば全滅してしまう。機械などなくても限りなく自然循環維持でできなくては何千年にも及ぶ生命維持環境を保持し続けることはできない」
他のメンバーが、
「えぇー、4千メートルの船ですか?そんな巨大な船を作ることができるんですか」
「人間の手ではとても無理でしょ」
「人間でなくて人間以外ってどういうことですか」
織田には建造のもくろみがあった。他のメンバーが、
「もっとコンパクトなせいぜい大型客船かタンカーぐらいの大きさではだめなんですか」
と言うと、堀内は
「太陽系外の惑星に出かけるのですよ。4千メートルの大きさでも、太平洋を小型ヨットで渡るくらいの大きさなんです。本当は1キロを超す船が必要だと思っているくらいです」
他のメンバーは堀内の構想を、始めのうちは全く理解できなかった。
堀内以外の5人のメンバーはそれぞれの立場から考えた。織田は、当初から環境保持の観点から大型の船がいることは漠然と理解できていたが、まさか4千メートル、4キロものか……と思う。
天文学者の星野は、宇宙の大きさと宇宙環境の過酷さから、小型の船ではとても長期間の航行や燃料をはじめ、補修用の資材を積み込めないと思っていた。
医者の本多は、生物の生態学的に閉鎖空間では精神安定が難しいが、あまりに広いのも人間の集団心理から人恋しさや、淋しさに耐えられるかの問題があるため、何か仮想空間の技術を使って気を紛らわす方法を取り入れなくてはと考えていた。
iPSの中本は、生命体をどのように何千年もの間生きたまま維持できるか、そのことしか考えていない。
宇宙船の大きさより時間の長さに耐えられる生命維持装置のことばかりが心配なのである。
伊藤はニューロンコンピューターが人間とうまく共存できるか、そしてコンピューターの機能劣化が起きたとき、人間の脳と同じで回復手術が困難に近いことを心配していた。