花は花として
わざわざ公式戦用のメンバー表用紙に、足立くんは書きあげてきた。新年早々の、五日午前の練習前、佑子に、これを人数分コピーしてほしいと職員室に持って来たのだ。
「私の名前まで載せなくても」
「いえ、目に見える形で、ティームの現状を共有するためです。先生、関東大会の県予選は四月になったらすぐです。もう三カ月しかないんですから」
四角い文字に、足立くんの律儀さや責任感がしっかり宿っている。四月だったら、この下にヘッドコーチ・永瀬基って入れるのかな。それに、今「一年」となっている部分は、「二年」と変わるのだ。大きな大会ではパンフレットも編集発行されるから、そんなあれこれの備えもしなくてはならない。
紙の資料は練習後に配ることとして、年始の活動がスタートした。新年最初の練習だし、軽く体を温め、ほぐすメニューではあったので、佑子は一旦職員室に引っ込み、足立くんが書いて来た用紙を拡大コピーした。そして、一人一人のこれまでを思い浮かべる。
1番プロップ・西崎要一(一年)・誠実であるきみを失わないで。スクラムはきみが。
2番フッカー・榎達朗(一年)・カラスのように、広い目配りと貪欲さがきみなんだ。
3番プロップ・円城寺照也(一年)・少しだけ足りないのは、闘おうという気持ちだけ。
4番ロック・寺島夏樹(一年)・ティームにメロディーを吹きこんでよ。FWを躍らせろ。
5番ロック・大前渉(一年)・空中戦はきみに任せる。身も心も、もっとぶっとくなろう。
6番フランカー・石宮圭太(一年)・タックル屋って、それはきみへの称賛の言葉として。
7番フランカー・岩佐雄吾(一年)・クールを気取ってもきみに似合わない。アツくなれ。
ナンバーエイト・保谷幹人(一年)・フォワードはきみが頼りだ。全てを、見つめろ。
9番スクラムハーフ・佐伯淳(一年)・もっとしゃべれ。きみの言葉がティームを作る。
10番スタンドオフ・足立善彦(二年)
11番ウィング・前田和(一年)・走れ。何も考えなくていい。その走りが未来を作る。
12番センター・澤田紳治(一年)・バックスの指揮者たれ。誰にも優しいパスの力で。
13番センター・椎名和輝(一年)・きみのパスが、ティームを創造する。そして、ラン。
14番ウィング・風間勇気(二年)・負けない、その意地は失わないで。前進あるのみ。
15番フルバック・今福丈太郎(二年)・今は、きみがラグビー部のキーパー。頼むよ。
Mgr・海老沼美由紀(一年)・その笑顔と声援はティームの宝物。元気をちょうだい。
Mgr・末広桜子(一年)・いつも実直な仕事師であることはみんなが知ってる。感謝。
監督・和泉佑子・だから、精一杯がんばるよ!