今宵はどのようなお客様がいらっしゃるのでしょうか? 楽しみにしながら、テーブルのセッティングをしておりましても、その後に始まるショーの歌を、お客様が嬉しそうに聴いているご様子を想像するだけで、わたくしどもウェイター全員も嬉しく感じるので御座います。

ディナーショーの中でも、この時のような高額なチケットをお買い求めになってお越しくださるお客様の場合、わたくしたちウェイターも仕事がやり易くなります。それは、お料理やお飲み物など、そしてテーブル・マナーに附きましてもよくご存じのお客様が多く、我々ウェイターがサービス各々のケースに付きそのような事を細かくご説明しなくても済むからなので御座います。

その巨大な宴会場で、料理を配るウェイター達のステーションとなりますキッチンは、と申しますと、他のどのホテルより大きさがありますために、そのディナーショーでは特別に新しいアプローチが採られました。

ホテルの宴会場の裏に御座います大きく広く長いキッチンから、手には何枚ものプレートを持ちましてお料理をお運びいたしますが、そこから、そのウェイター自身の担当のテーブルに着くまで延々と会場内を廻り歩いて行きますと、少なくとも五分は掛かりますので御座います。

それを、何回も行き来するものですから、1回のディナーショーでお料理のお皿を運ぶために歩く距離は相当なもの、となるので御座います。ですから、この時にはその宴会場の中央部分には、サブのキッチンがもう一つ用意されたので御座いました。

つまり、巨大なその宴会場の隅々のお客さまにまで、個々の種類のお料理が同時に行き渡りますように、お料理を提供するキッチンを複数設けたので御座います。それは、温かいお料理は冷めないうちに、そして冷たいお料理は温まらないうちにご提供するという、いずれの種類のお料理にも共通するポリシーに基づいての配慮によるものでも御座いました。