「悪戯!」

僕の友人が、悪い奴ではないのだが、「悪戯」を教えてくれた。少年時代の話である。

そいつは一人で自宅近くの空き地で焚火(たきび)をして遊んでいて、最初は焚火の炎をあがらせたりするだけだったが段々研究していき、大きなドラム缶の焚火に殺虫剤の「LPG火気厳禁」とあるスプレー缶を(たた)きこんで(しばら)く待つと、爆発して花火より凄い、広島・長崎のような、巨大なキノコ雲みたいなものが湧き上がる。

僕の友達はその様な火柱キノコ雲が上がる事を面白がるようになって行った。そして

「お前もやってみ~ィ」

学校で会った時に、僕に教えてくれたのだ。

花火よりも面白いぞ~ッ、という事で、キノコ雲を見たくて、僕も自宅近くあった空き地で、焚火に同じように殺虫剤のスプレー缶をくべたところ、キノコ雲ならぬ少爆発とともに火の粉がたくさん流れ出た。そして、それがかなり高くまで昇り、飛散して行き、広い空き地でやっていたのに近くの枯れ草にたくさん飛び火して、小さなボヤが多数発生。

そうしたら、それを見ていた近くの恐いおばさんが消防署に通報してしまい、消防署の人がたくさん物々しい格好で集合して来て散々に怒られた。

だが、やっぱり奴に言われた通りに、筒状になっているドラム缶の中に殺虫剤のスプレー缶をくべればよかったのかな? そうすれば、僕も広島・長崎のようなキノコ雲を見る事が出来たのかな? と思い、少し残念な気がした。僕もまた奴のように研究しなければいけなかったのかな~ァと反省もした。

それに、夕方少し暗くなった時や夜間にでも奴のようにやれば、炎はオレンジ色の(カガヤ)()も増して、本当に花火より華々しく美しい、素晴らしいものになったかも知れないな!? と僕は思ったのである。それに、奴の研究は、一度や二度ではなかったはずなのに、何で一度だけの僕が怒られたのか? 少年時代にとても不思議に思った。

※僕の少年の頃には子供達は原爆を花火くらいにしか考えてはいなかった。