酸化マグネシウムと高マグネシウム(Mg)血症
2020年8月5日にPMDA(医薬品医療機器総合機構)に掲載された「製薬企業からの医薬品適正使用注意」に「酸化マグネシウム(以下、カマ)の長期服用患者、腎障害を有する患者、高齢患者、便秘患者への投与は高マグネシウム血症を発症しやすくするので注意が必要」という話題が紹介されていました。実は死亡例すら出ています。
カマによる高マグネシウム(Mg)血症は重大な副作用として2008年9月に添付文書に追記されました。当時の「医薬品・医療機器等安全性情報No252」で死亡例が2例報告されていたにもかかわらず、その後も高Mg血症の発症やそれによる死亡例が出ているため、製薬企業から再度の注意喚起がなされたようです。
カマは腸に負担をかけないタイプの一般用医薬品「便秘薬」として1錠当たり330mgの単一成分製品も販売されていますので、医療用ばかりでなく一般にも広く利用されていると思われます。パスカラニュース36号でも取り上げた話題ですが、最近聞いたカマ常用患者さんの話も折り込みながら、再度カマの話題になります。
①血清マグネシウム濃度と症状(今回の報告から)
血清Mg値の基準値は1.9~2.5mg/dLです(「臨床検査値ハンドブック第3版」じほう、2017年より)。36号で紹介した1人の死亡例の血清Mg濃度は17mg/dLでしたから、表17から見てもかなり危険な領域にあったことが分かります。
②酸化マグネシウム(MgO)の下剤としての機序
MgO(難溶性)は胃酸(HCl)と反応して塩化マグネシウム(MgCl2)になります。
MgO+2HCl⇒MgCl2+H2O
塩化マグネシウムは水溶性のため、この段階で一部のMg2+が小腸から吸収されます。
さらに塩化マグネシウムは腸内のアルカリにより、難溶性の炭酸マグネシム(MgCO3)になります。
MgCl2+2NaHCO3⇒MgCO3+H2O+CO2+2NaCl
腸内に残る難溶性炭酸マグネシウムが腸管内浸透圧を上げて、腸壁から水分を腸管内に引き込んできます。この水分が硬くなった便を軟らかくして便秘状態を改善する、というのがカマの作用機序です。