サッカーする場所がない

子どもとサッカーをするためには、車で数十分走り、大型(おおがた)の公園まで行かねばなりません。しかも、キャッチボールやバドミントン、よちよち歩きの子ども達まで混在(こんざい)している広場ですから、(つね)に思い切りというわけにもいきません。

子「この公園、うちの近所にあればいいのに」

父「毎日サッカー出来るねぇ」

子「公園はたくさんあるけど、何でみんな同じような感じなの? ブランコ、すべり台、砂場(すなば)……みたいな」

父「置かなきゃいけないって決まりはないはずだけど。あった方が(よろこ)ぶだろうと、作る人が思うんだろうね」

子「元々(もともと)(せま)いのにさ、動かせないものを置くと邪魔(じゃま)だよね」

父「それ、サッカーしか考えていないよね」

子「なんでどこも球技禁止(きゅうぎきんし)しなの?」

父「遠くに飛ぶからさ、家のガラス()ったりとか。ジャイアン達が遊んでいる公園みたいに」

子「すごい高いフェンスがあっても禁止(きんし)だよ」

父「じゃあ音かな。バットで打ったり、足で()る音って結構(けっこう)大きいからね」

子「それじゃあブラジルには一生勝てないね」

父「道路も全てサッカー練習場って言われるもんね」

子「みんな、公園があるのは(いや)なのね」

父「そんなことはないと言いたいところだけど……自宅(じたく)(はな)れた所なら、子ども達の(ため)に公園を()やすべきだ! って言ってくれると思うよ」

子「全員がそう言ったら、作る場所ないじゃん」

父「あんまり言いたくないけど、現実(げんじつ)はそうなんだと思う。保育園(ほいくえん)幼稚園(ようちえん)を作るのにも反対運動が起きるしね」

子「教えて。みんながうるさいのは、バットで打つ音、足で()る音、子ども達の声なのね?」

父「……(おこ)っているの?」

子「え?……あ、(おこ)ったのかなぁ? (ぼく)は悲しいんだよ」

お父さんのひとりごと

基本的(きほんてき)に、ケガをしないよう、芝生(しばふ)()いた空間をただ(あた)えれば、子ども達は勝手に遊べるのであって、余計(よけい)なことをする必要はない――MAZDAスタジアムを設計(せっけい)された仙田満(せんだみつる)氏が(おっしゃ)っていました。私もそう思います。()が国の都市公園政策(せいさく)はどうでしょう?

人口密度(みつど)あたり、これだけの公園を(こしら)えていますよ、しっかりやっているでしょう? そんな意図が如実(にょじつ)に表れた、面白みのない公園が出来上がっていないでしょうか。

そもそも公園とはなんでしょうか。うるさいくらいの子ども達の声がこだまする公園。それがクレーム対象(たいしょう)になっている現実(げんじつ)を変えることは、子どもには出来ません。大人がどれだけ一肌(ひとはだ)()げるか。これは公園にとどまらず、特に子どもに係る社会政策全般(せいさくぜんぱん)に言えることではないでしょうか。