「絶対1位」と「相対1位」吉田沙保里敗退とSMAP解散に思う
絶対女王、吉田沙保里が敗れた。そしてインタビューの中で、「金メダルが取れなくてごめんなさい……」と顔をくしゃくしゃにして泣いた。そこには、過去3回オリンピックの頂点を極め、「女子レスリングの神様」が選んだ、ただ一人のレスラーの面影はなかった。
メディアはもちろん、国民も、揃って一瞬の落胆を見せた後、自分の気持ちを整理できないまま、「それでも銀メダルだ、良くやった」と称えていた。しかし、私は、こういう掌を返したような対応に付いて行けず、複雑な感情を持て余してしまった。そうだ! 民進党の蓮舫議員ではないが、彼女にとっては、「金メダルでなければ(=1番でなければ)ならない」戦いだったのだ。
世間が言うような、薄っぺらい「4連覇」ではなく、彼女は、再び「女子レスリングの神様」に選ばれるように、数多くの使命を自分に課しながら、孤高の道を歩んでいたに違いない。それは、体力の衰えをどう克服するかから始まり、研究し尽くされている戦い方をどうバージョンアップするか、そして、オリンピック日本選手団の主将として精神的支柱となるための振る舞い方まで、彼女が自分に課した「守備範囲」はとてつもなく広かったのだと思う。
こと試合のみに焦点を当ててみると、素人目にも、筋肉の厚みや張りは、全盛期に比べると見劣りしていた。また、決勝では、相手にしっかりと頭を付けられ、長い手でタックルに出るタイミングを封じられていた。残念ながら、攻めあぐんだ結果の敗戦だったと言ってよい。