バイエルン風景

ノイシュバンシュタイン城からドイツはユーロ圏である。またこの国の消費税率はユーロ圏としては低いほうだが一六%である。

ローテンブルクからニュルンベルクを経て、古城街道はワーグナーの祝祭歌劇場のあるバイロイトに達する。この祝祭の入場券は八年先でないと予約できないといわれる。小泉首相が訪れたら、すぐ入れたというのはどういうわけだ。

第三日、私たちはそちらへは行かないでアウトバーンで真っ直ぐ南にロマンチック街道を下がった。

至るところ牧草地で、森林も多い。人家など見えないのが日本と違うところであり、緑の環境のご本家という感がある。ドナウの源流も渡った。四時間のバスツアーでローテンブルクから二四〇キロを超してそろそろ退屈する頃、前方に湖水と山脈が見えてきた。山の斜面に、写真でおなじみのノイシュバンシュタイン城が見えたと思ったら、ホーエンシュバンガウの基地に着いたのは、予定どおり正午だった。

暑いので売店でご当地のチロルハットを買った。レストランで昼食だが、メニューはドイテェパスタ入りコンソメスープ、ポークステーキ・キノコソースかけその他だった。ツアー仲間のN夫人から私のことを、「チロルハットの佐分利信」とアダ名をもらった。寡黙で渋いんだそうだ。このレストランにもハエがブンブン飛んでくるので、追い払うのに忙しく、すべてと共生するドイツの面目躍如である。

お目当てのノイシュバンシュタインへは入口までバスで登った。この未完成の時代錯誤の城は、それ故に大混雑の観光資源となり、ルートヴィヒ二世もしてやったりというところか。ディズニーアニメのモデルとなり、童心の懐かしさがとりえだが、ワーグナーがからんでいて、彼の颯爽たる反面、神秘的な音楽も子供があこがれるのだ。私が一番心を打たれたのは窓から切り取ったように展望できる素晴らしく豊かなバイエルンの風景である。なぜか撮影禁止で、写真で紹介できないのが残念。この風景こそルートヴィヒ王が大満足した宝物ではないか。