飛び込み営業への挑戦
朝、仕事の前に太洋が額縁を見せて
「うまくできただろう?」
「へえ。ありがとな。絵を入れてみないと。出来栄えはいいよ。気に入ったよ」
「縁厚くしてマットを細くした。くっきり別世界だ」
古いデザインの彫りの錫色に古色を掛けた。
「お前、センスあるな」
「兄弟だからね。だけど、金は貰うぜ。マットとアクリル板は買った。他はここにある物を使った。買い物の時間はいいや。マットとアクリル板、二万。領収書要らないだろ。プラス俺の時給、二割引き、四万」
「商売は下手だ。客を得した気分にさせなきゃあとが来ない」
「絶対得だぜ。淳さんに褒めてもらいたくて精々苦心したんだから」
「動機が不純だが、いいよ、あとでな」
「兄ちゃん、これからも俺を使うなら、専属契約しろ」
「考えとく」
夕方、下ろしてきた現金を渡すと
「専属契約、本当だ。俺だって今に女房子供ができる。遊ぶ金じゃなくて生活する金が要るようになる。兄ちゃん、絵、続けろよな」
これにもおたおたした。