「ね。これ、素敵だわ」
嬉しかった。淳さんを振り回して燥ぎたかったが、大人らしくハグとキス。控え目に。
「額縁をあなたが気に入ってくれるように頑張ったんだって、太洋」
毛布に包んで小さい画廊に持ち込んだ。
「この絵、視てください」
弱気じゃだめだとわかっているが、弱気なんだから。淳さんが褒めてくれた、淳さんが褒めてくれたと胸の内で呪文を繰り返す。
画廊主だろう、上着を取って襟付きのベストにネクタイが気障でもなくて怖じ気付くが、気軽な様子で俺に手出しさせずに毛布を開いて、傍のイーゼルの絵と差し替えて、矯眇つ視る。
「一点だけ?」