俳句・短歌 短歌 2022.01.30 短歌集「蒼龍の如く」より三首 短歌集 蒼龍の如く 【第47回】 泉 朝雄 生涯にわたって詠み続けた心震わすの命の歌。 満州からの引き揚げ、太平洋戦争、広島の原爆……。 厳しいあの時代を生き抜いた著者が 混沌とした世の中で過ごす私たちに伝える魂の叫び。 投下されしは新型爆弾被害不明とのみ声なくひしめく中に聞きをり 伝へ伝へて広島全滅の様知りぬ遮蔽して貨車報告書きゐし 擔架かつぐ者も顔より皮膚が垂れ灼けただれし兵らが貨車に乗り行く 新聞紙の束ひろげてホームに眠る中すでに屍となりしも交る 息あるは皆表情なく横たはり幾日経てなほ煤降るホーム (本文より) この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 頂を南に越えて飛ぶ雲に つかのま濡れて杉はしづくす 深山みやまの杉の秀群ほむらのどよもしぬ 夜更けて雲の移りゆくらし ひったりと頭に敷ける草の葉の 冷えすがしくて寝いねにけらしも
エッセイ 『ねぇねぇみかどのおばさん』 【第3回】 六谷 陽子 不良とつるみ始めた近所の男の子…。駄菓子屋のおかみが決行したのは「えこひいき」作戦!? 一 みかどを閉店します富山の片田舎から下町に嫁いだ頃は、母も人間関係で苦労したようです。当時は、各家庭には水道は通っておらず、共同水道を十世帯くらいで使っていたのです。そこに行けば、他の誰かが必ずいます。特に水を使う時間帯は同じだから、会わずにすませる、というわけにはいかなかったようです。年配のおばさんたちは、個性的で嫌味を言う人もいれば、優しい人もいます。年配らの会話を笑いに変えて楽しむ若妻も…
小説 『上海の白い雲』 【第6回】 河原 城 冬の天津や大連は高層ビルの横を歩くのは危険!太陽が昇るとあるものが落下する!? 旅先での買い物は、二人にとって驚き一杯の楽しい思い出となった。上海での買い物は、外国人と中国人で価格が違っていた。商品を中国人価格の二十倍以上で外国人に売りつける商売人もいて、仁は常に丽萍(リーピン)に値段を確認してから、商品を買った。買わない素振りを見せると店員から、半値にしたり、十分の一程度での購入を懇願してくることも多く、元の価格が全く分からない物も多々あった。更に店員の中国人への接客態度…