これは2つの点で大学にとって難題である。1つ目は人材の問題である。四大・短大合わせて1,000を超える高等教育機関のそれぞれに教学IRを専門的に扱える人材を確保するのは、少なくとも短期的には無理である。
そのため、教学IR活動で先駆的役割を果たしている大学などが中心となって、人材を養成するセミナーや教学IR活動を啓蒙するシンポジウム・研究会などが定期的に開催されている。それでも教学IR活動の重要性が大学内で共有されているかどうか、甚だ疑わしいのが現状である。
2つ目は大学認証評価である。これは2004年度から始まった制度で、各大学は7年に1度、大学の現状や改革の進捗状況などを第三者機関からチェックを受けなければならなくなった。
各大学これまで2度の認証評価を既に受け、2018年度から3巡目に入るが、今回は教学IR活動の成果を示さなければならなくなることが予想されている。
極端な言い回しで恐縮だが、1巡目は初めてのことだから《改革やります!》と言えば認められた。2巡目は《改革やってます!》と言えば認められた。だが、3巡目に突入すれば【で、どうなったの?】と問われるのは自然な成り行きであり、その証拠提示のために早い段階から教学IR活動の成果を蓄積しなければならない。
しかし、授業改革にせよ、教学IR活動にせよ、外部から押し付けられた印象の強い事項には、体裁だけを整えてやり過ごそうとするものである。
つまり、本来大学の内部をよりよくするための活動の1つであるはずの教学IR活動が、大学の外面をよくするために運用される。まさに本末転倒である。