人間が住める星を探す大学教授

そして織田がもう1つ、夜のことも話しだした。

「夜は星を眺めるのが好きでした。何分教材がないのでただ眺めているだけでも心がワクワクしました。今では都会暮らしなので眺めたくてもほとんど見えないのが残念です」

「星ですか。織田さん、私がソフト開発でお手伝いしている人に、大菊大学の星野教授がいるんですが、星のことなら何でも知っている方です。ご紹介いたしましょうか。ただ難点は、ちょっと変わり者で星のことしか話さないのです。世にいう変人奇人という部類ですがね」

織田が

「伊藤さん、私もあなたも変人ではないですが奇人の部類でしょ」

と、笑いながら

「変人奇人、大いに結構ですね。それは面白そうだ、是非お会いしてみたいですね」

と、ほほ笑む。

「その星野さんが使う天体観測のソフトをいつも私がお手伝いしているんです。彼の専門はAIを使って、新星の発見と新星の周りを回る惑星研究をしているんです。先月お会いしたときも、オリオン星の何とかやらの方向に新星を見つけて、自分で名前を付けたって言ってましたよ。その名前がえらく面白くて『飛ぶ馬』と書くんだそうです」

「ヒュウマですか。カッコいいんじゃないですか」

「いえ、とびうま=TOBIUMAと読むのだそうです。彼の夢は、新星の発見ではなく本当は人間が移住できる星を探すことなんだそうですがね」

「伊藤さん、星を眺めるだけでしたら、さしてコンピューターなど必要ないのではないですか、すでに開発されているソフトで十分なのでは」

と疑問を投げかけると、

「それが彼の研究は、自分で望遠鏡も覗くのですが、それよりも世界中の大型望遠鏡が映し出したデータをもらって、その中から自分の研究テーマを探し出していく方法なのです。そのために取り寄せたデータの加工に専用のソフトが必要になるので、私に開発を頼んでくるのです」

「そうですか、1人でできることは少しですが、世界中の観測データを利用してやっているんですか?」

「何万年も先の星を覗いて、その星の周りに地球のような惑星があるかどうか、あるならそこに生命が存在できるかどうかの研究とか言っていました。無口で星ばかり見ているちょっと変わり者です」

「あなたに変わり者と言われるんじゃ、その星野さんは相当の変わり者なのですね。あなたのことを堀内さんが変わり者と言っていましたよ。相当の変わり者とね」

伊藤は

「私は変わり者ではありませんよ。研究熱心なだけです」

と自己弁護をする。