【小説】「科学者だからこそ、神に会えると思うんです」

「その星野さんが言うには、自分は地球以外の天体に生命が必ずいると信じて、日夜望遠鏡を覗いていると言うんです。そして、その星野さんの趣味は、子供の頃よりUFOに遭遇することなんです」

「そんな方が本当にいるんですね」

「今では日本UFO通信協会の代表をしているので、会うたびに僕にも入会してくれと誘うんです。内心困っているんです。何せ会員が3人だけの会なんです」とほほ笑む。

「しかし、彼の本来の研究は天才的な方法で、宇宙を映し出したコンピューター画像をAIに学習させて、生命のいそうな星を探し出すという方法でして、今までにいくつか見つけたと言っているんです」

織田は「そうですか」と、生返事をする。

伊藤は「ですよね。人間の住める星に関心のない人はいないですよね。彼は学会でも発表していますし、この前は科学雑誌にも載ったと言っていました」

織田は「そうですか」としか答えられないでいる。

「ただし、とても生きているうちに行けるようなところではないといつも嘆いている人です」と、伊藤が続ける。

織田は「夜空の星なんて何千何万もあるんでしょ。そしてその星の周りには地球のような惑星が何万個も回っているのですよね。その中から生命が存在する惑星を見つけるんですか」と、疑問を投げかける。

「そのようです。僕にはどの星を見ても大きいか小さいかくらいにしか見えませんがね。」

彼によれば惑星のある星はまばたく様に光り輝くんだそうです。よーく見ていると自分に向かって星がウインクしてくれているんだそうです」と伊藤が答えると

織田が「それではまるで星が恋人なんですね」と言う。

伊藤は「そうそう、その中の一番の恋人が確かオリオン星座の近くにあったように言っていたな」と、彼の熱意を披露した。

伊藤が続けて「この前、星野さんが日食観測をしたいと私と一緒に堀内さんの研究室がある竹取村に出かけ、村人と7人で一緒に酒を酌み交わしながら星を眺めていたときなんか、星のことばかり話すので、僕はしょうがないので酒ばかり飲んでいて二日酔いになってしまいましたよ（笑）

隣の席に座っていた村の人たちなどは、私たちの話を聞いていたのか知りませんが、私たちを怪訝そうな顔をして見ていたかと思ったら、ちょっと気分を害したようで途中で1人減り2人減りして、物もろくに食べずに出て行ってしまいましたよ」

伊藤は織田が子供の頃星を眺めて育ち、星に興味を持っていることに気付いて、

「織田さん、近いうちにこの星野さんをお連れします。楽しみにしていてください」と、約束した。

それから2か月ほど経った頃、伊藤は星野を連れて織田のところに出かけた。

織田は星野のほとばしる星の話に子供の頃を思い出し、星野のUFO通信協会の4人目の会員になった。