本多と伊藤は織田にこのことを話した。
織田は「それは面白い、是非私を実験台にしてくれ、いつ頭の線がまた切れるかわからない状況だ、もし切れて今の記憶がなくなっても、俺の脳みそが複写して残っているなら、もとに回復することもできるんだな」
本多は「うぅうぅ……脳の方が壊れてしまえば戻すことはできないかもしれませんが、写した脳が織田さんそのものになると考えた方がいいですね。
身体は消耗部品ですから、脳が正しく機能している方が織田さんということになります」
「えぇー、では壊れた脳の方も俺、コンピューターの中にも俺がいるということになるのか」
「そうです」と小声で答える。
「なんだか頭が混乱してきたが、死んでいなくなるんではなくて増えるんだからまあいいか。コンピューターのデータでも複写したり戻したりしているうちに、どちらが現在進行形のデータだかわからなくなることがある。本体とタブレット端末みたいな関係だよな。そんなことと一緒ということだよな、伊藤君」
伊藤は織田から伊藤君と言われ返事をすることなく本多の方に目配せをしたが、本多も気付かないふりをして足元を見たままである。