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流木倒木横転木っ端丸太棒
呪文を唱え
鉈を振った
叩き割った
驚愕や恐怖や絶望や悲痛の残像が犇めいたが
像の口元には悦びの印を刻んだ
忿怒が悦びを刻んだ
生が真に生きる悦びを感じるのは人のために利他本能を生きるときだったのか
円空は七日七夜絶食不眠不休
生まれて初めて知る法悦のうちに忿怒の自刻像を彫った
弁財天十五童子の自刻像と多数の木っ端自刻仏を彫った
一つ一つ生き残った村人に手渡した
私たちにできることは今日を生きること
昨日とは違ってしまった今日を生きること
亡くなった人は叫んでる私の分も生きてくれと
村人は身もだえしながら彫像を抱きしめて祈った
円空も慟哭をこらえ生まれて初めての祈りを祈った
暗い水底の死と生の狭間から初めての祈りを祈った
神は在るもの来るもの立つものか
仏は成るもの往くもの座るものか
一つの生はいま涯しない生の全体とつながったのか
木の彫像はいま涯しない仏の全体とつながったのか
法悦とはその対極の闇の深さに釣り合っていたのか
円空は生涯十二万体造仏を発願した
生涯十二万体の仏身を生きると発願した
中国四国京都奈良岐阜名古屋関東長野新潟奥州津軽蝦夷松前
忿怒の尊像 歓喜の神仏像を人々に伝えるのだ
その歓喜を共に生きるのだ生きるのだと
優婆塞聖の命を削る
あらたな歩行へ
乞食流浪の
旅に出た