歓喜の円空 ―一寸彫って一寸の地獄 一寸の浄土
◆護法神
彫っている
なにが
出て
来るのか
わからない
見えない力を
押し返している
木の奥に
それはいる
呼びかけてくる
手招ぎしている
叩き割る
断面に並ぶ
生の凹凸
歪み虫食い木目のながれ
生が生にふれる
躊躇はない
さらに
鉈を振う
輪郭を引出す
目を刻む
口元を撥ねあげる
美しく見せるための
一刀もあってはならない
呼びかけてくる声に気圧されてはならない
神仏らしく見せる一切の手立てを捨てねばならない
身体の思考を疑ってはならないすべてを任せねばならない
あの聖観音像は欺瞞
十一面観音立像は追従
阿弥陀如来像は宗門布教
違うそういうものじゃない
俺が彫りたいのはオレ 仏身である自刻像
オレそのものの仏刻像 仏そのものの自刻像