そねみマシーン

私のそねみマシーンは感度良好で

初めて会った人が

なにかしら私より多く持っていたら

たとえばお金だったり

若さだったり

美しさだったり

才能だったり

知識だったり

愛され具合だったり

心のゆとりだったり

とにかくなんであろうと

すぐ感知して

オートマティックに

感じの悪さをマキビシのようにばらまく

そうすると

相手は驚き

顔をしかめて背を向ける

これまで生きてきて

このマシーンが

どれだけのご縁をぶった切ってきたかわかりゃしない

ああ

もったいない

私の歩いたあとには

累々たるご縁の残骸

だからといって

なにかしら私より少なくしか持っていない人に対して

というか

たまには私より少なくしか持っていない人も現れてほしいという

願望による捏造によって

そう思われる人に対して

お日様のような

お花のような

寛容な態度をとるかといえば

そんなことは一切なく

その場合は

マシーンは反転して

見下しマシーンになり

感じの悪さを冷水のように浴びせかける

当然相手も

不快の念を露わにして

そそくさと立ち去る

そのあとで

その人こそは

思いもよらない物を持っていて

いかようにも私を助けてくれるはずだったと知って青ざめる

どうして人と出会うたびに

なにか脅かされるように身構えるのか

上か下か

多いか少ないか

役に立つか立たないか

そんなことはどうでもよくて

その出会いによって

より豊かになる人生を喜べばよいものを

常にジャッジを迫られて

キュウキュウとして

どちらのマシーンも作動させずに生きていくのは

平均台の上で暮らすのと同じくらい難しい