海辺の学校で
「私ね、おせっかいな性格なんだよね。誰かの、お世話したいの」
海老沼さんは、はにかんだ笑顔を浮かべる。きっとそんな、単純な気持ちではないんだろうな、と佑子は思ったりもするのだが。
「頼んじゃおうかな。私と、二人マネージャーということで」
「いいですか? なんだかのんびりしているうちに、サッカーも野球もバスケも、マネージャーさん決まっちゃってて。でもね、私、お父さんがラグビーやってたから、ラグビー部のマネさん、やりたかったんですよ」
目が輝く。
「頼むね」
佑子の言葉は、海老沼さんの笑顔を、とびっきりの笑顔にした。そして、横顔を見せる基にも声をかけた。
「モトくん。どうせならタックル教えてくれない? せっかくヘッドキャップとかもそろったんだし」
足立くんが、佑子と基の顔を見比べながら、表情だけでこの人誰ですか? と訊いている。佑子も部員たちの方に歩み寄りながら笑顔になった。
「私の、高校のティームメート。元フランカーだよ」
「永瀬って、いいます。よろしく。ハンドダミー、ある?」
部員たちは立ちあがりながらおずおずと頭を下げる。佑子は足立くんと海老沼さんと一緒に部室に取って返す。足立くんはあちこちほころびも目立つハンドダミーを抱えて飛び出した。緊張した表情ながら、目に光が宿っているのが分かった。
一方で、がさつに積み上げてある用具の中から給水ボトルを探し出した海老沼さんは、佑子と一緒に大急ぎで洗った。洗剤のボトルも埃だらけではあったが。どうしてそこにあるのかは分からなかったものの、部室に積み上げてあったスーパーの買い物かごに水を詰めた給水ボトルを二人で持って、砂浜に向かった部員たちを小走りで追った。