(2)ゆっくりと効いてくる薬の特徴

こちらは半減期の長い薬と言ってよいでしょう。血圧を下げる薬のアムロジピンの半減期は36時間とかなり長い薬です。この薬は1日1回服用すればよい薬ですが、その血中濃度の推移を見ると図3のようになります。

血中濃度が下がり切る前に次の投与が繰り返されるので、次々と血中濃度が継ぎ足されかなり高い血中濃度で安定していることが分かります。この高い血中濃度の位置で上下動を繰り返す状態(矢印間)を定常状態と呼んでいます。定常状態の存在する薬はその付近になった頃合いに安定した効果を発揮します。そして、定常状態に達する時間は半減期を4~5倍経過した付近になります。

前述のように薬の効果がなくなるのも半減期の4~5倍経過後で、数字が一致しているので覚えやすいかと思います。私はざっくり4.5倍と覚えています。

従ってアムロジピンの場合は、単回投与のCmaxでは血中濃度が低くて効果は期待できず、4.5半減期後の162時間後、つまり大体1週間後くらいから安定した血圧低下作用が期待できる計算になります。高血圧治療では急激な降圧作用はかえって良くなくゆっくりと血圧を下げるのが良いとされていますから、ちょうど良いあんばいの薬と言えるでしょう。

(3)定常状態のない薬とある薬の区別

(1)で示したジクロフェナクは半減期が短いため1日3回投与しましたが、図2を見ると図3と同じように定常状態があるように見えます。しかし1回目に投与したCmaxと第2回目以降のCmaxは図3のような高い血中濃度にならず、ジクロフェナクの1日3回投与では定常状態が実質ないと見なせます。

写真を拡大 [図3]アムロジピン血中濃度模式図

さらに血中濃度の下がり具合も大きいため、次の服用時間を守らないとすぐに痛みが再燃する人も出てくる可能性があります。

定常状態のあるなしを判断するには、投与間隔(τ)の中に半減期(t1/2)がいくつあるかで見る方法があります。

  定常状態なし:τ/t1/2 ≧4

  定常状態あり:τ/t1/2 ≦3

3~4の間は適宜判断することになります。

 ジクロフェナクの場合は、τ(8時間)÷t1/2(1.2時間)=6.7>4 →定常状態なし

 アムロジピンの場合は、τ(24時間) ÷t1/2(36時間) =0.7<3 →定常状態あり

となります。