50人いたら50人の目で見る
 

現場を監視するのは現場監督の役目である。だけど、職人含めて50人いる現場だとしたら、大体現場監督は3~4人といったとこだろう。3人だけで現場の隅々までチェックするのは、不可能ではないけど、大変だ。

でももし、50 人がそれぞれに監視の目を光らしてくれたら、1人あたりの負担はもっと少なく、しかも遥かに管理精度は高いだろう。スマートゼネコンマンはその状態を目指すべきだ。

僕自身、完璧にできたと思ったことはほとんどなく、常に目指していただけだ。でも、一度だけ、完璧に50人の目が機能したと思えた現場があった。

その現場では、いつも以上に職人と良いコミュニケーションが取れていた。

ある時、外壁の工事や屋根上に昇るために設置された足場の上で作業している職人から連絡があり、「屋上の防水シートがめくれているけど、防水の職人さんいないから、とりあえずこれ以上めくれないように補強しておこうか?」と持ち掛けられた。

自分の仕事じゃないところに、職人が口出しすることは珍しい。他にも、電気工事の職人からは、「あそこが暗いから仮設照明やっておこうか?」とか、とにかく職人から声が上がってくるのだ。

この年、東北地方でも数十年に一度と言われた大豪雪が起きた。当時、支店管内の全現場で、想定を超える大雪のせいで除雪作業が進まず、大きな工程遅延を被った。

だが、僕の現場は全くもって予定通りに進んだ。大雪の予報が出た朝、僕が交通混雑を予想して朝4時半頃に駆けつけると、既に除雪作業が始まっていた。

混雑する前に現場の鳶土工の職人が集まって除雪作業を行い、朝礼が始まる頃には除雪が完了してしまった。

何も指示したわけではない、職人全員が同じ気持ちだったのだ。その現場は、当然のように無事故無災害で竣工した。

日頃から職人一人ひとりに心を寄せ、それぞれの価値観を認め、お互いの良さを引き出し合うような関係を築けた時、現場は、職人の数だけ強くなる。

まずは一人からでいい。あなたが寄り添っていくことから始まる。