必ず絵で見せる躯体工事検討会をする、しかも早く!

現場全体を1+1=3にするために最も大切なのは、躯体工事でなるべく高い成果を出すことだ。むしろ、躯体工事で1+1=3を実現できれば、あとは何とかなると言っても過言ではないだろう。そこで、なるべく早い段階で躯体工事検討会を開いて欲しい。

初めての人は、とにかく躯体工事に関係する業者(鳶土工、型枠大工、鉄筋、左官、各種設備、鍛治工など)に会議のお知らせをする。

最低でも躯体工事が始まる2週間前、できれば1カ月以上前には行いたい。特に重要な業者には予め電話で出席してもらえるかどうか確認した上で日程を決めよう。

それができたら、躯体工事の計画を、今できているレベルで構わない。あなたがどうしたいかわかればいいので、計画内容を絵工程や納まり図に書いて検討会資料として配る。

そうすれば協力業者は、みんなそれぞれに、自分たちができるだけ良い条件になるように意見を仕掛けてくる。こうやって、職人が現場作業に入る前から、会社レベルでお互いの好条件がわかっていれば、みんなで協力し合うものだ。

言い換えるなら、職人がスムーズに作業するための「前提条件」を作り上げておくのだ。

僕が入社して5年目の頃だったと思う。どれだけ現場工程が遅れていても、日曜日は作業しないということで、東北支店内で有名な協力業者がいたけど、僕の現場では自分から言い出して日曜日に作業してくれた。

確かにきつい工程だったが、早い段階で計画を伝えていたので、その施工計画がベストであること、それがこの現場の前提条件であることを理解してくれていた。

何より協力業者にも準備する時間を与えていたから、準備が足りなかった分を自分たちでまかなってくれたのだ。

「あんたじゃなければ諦める!」で職人をくどく

これは、頑固なベテランを口説く時に有効だ。

建築士には2種類のタイプがいる。現場の施工を考えずにデザインするタイプと、施工性を考えてデザインするタイプだ。僕は前者が建築技術を発展させてきてくれたと思っている。

ただ、工期も決まっている中で現場を進めるにあたっては、前者の要素があまりにきついと、実際に施工しようとしても解決策が間に合わないことが多々あるのだ。

そういう意味で、後者の建築士と仕事をする時は、往々にして現場がスムーズに進む。前者の建築士との会話で必ず出てくるのが、「それをどう造るかを考えるのがゼネコンの仕事でしょう」というものだ。

確かにその通りだと思う。今の技術ではとても作れそうにないものを、何とかして作ろうとする熱意が建設技術を発展させてきたのは疑う余地もない。

だけど、現場には限られた工期があり、予算があり、そして何よりどんな技術ができあがっても、それを実際に施工する職人には、誰にでもこんな情熱があるわけではない。

というか、自分の技術にプライドを持っている職人だからこそ、できないことにはハッキリとできないと言う人が多い。そんな職人に新たな技術を発揮してもらうにはこの言葉しかないのだ。

「一番能力のあるあなたですらできないのなら、諦める。だけど、あなたの験を活かせばもしかしたら可能性があると言うならやってみてくれないか?」こう言えば燃えてくるのが職人の性だ。

ただし、普段のコミュニケーションがよくないと、職人を燃えさせることは難しい。というか、そんな言葉をかける雰囲気にもなっていないはずだ。

だから基本的には、第2章に書いたようにしっかりと職人とコミュニケーションを取れていることが前提になるが、この言葉はあなた自身のためでもある。

ゼネコンマンの仕事は、いくら効率よく処理しても、やむなく精度が悪くなってしまう面もある(僕の場合は、だ。天才はそんなほころびも見せないのかもしれないが……)。

そんな時、職人の方から図面の問題点などをきちんと指摘されるようなら最高の関係だ。

「中根さん、図面にああやって書いてたけど、こっちの方が納まりいいから変更してやっといたよ」みたいなこともあった。

本来は、現場監督にしかわからないような様々な条件があって図面を描いているのだから、勝手に変えられても困るのだが、たまたま僕が図面を間違えていたりした時に限って、職人が図面を無視して最適な納まりで施工してくれたのだから、日ごろのコミュニケーションに感謝するより他にない。

この時も僕は、「さすが〇〇さん! あなたにしかできないし、あなたじゃなかったらこの現場は終わらねぇよ」とまで言ってしまう。

本当にそう思っているから決してお世辞でもなんでもないのだが、職人にとっても滅多に言われることではないはずだ。よほど言い方を間違えなければ、職人の気分が上がることは間違いない。