PQQの「寿命を延ばす」効果と安全性

αシヌクレインを抑制する効果

こうした効果だけではありません。

PQQには「αシヌクレイン」の凝集を抑制する作用があることが、2006年に東京農工大学などの研究チームによって確認されているのです。

αシヌクレインとは、「神経細胞にたまるゴミ」ともいわれているレビー小体の主なタンパク質で、これが脳に蓄積するとパーキンソン病やレビー小体型認知症が発症することが知られています。

現在、市販されているブレインフーズ(脳を活性化する食物)には、DHA、イチョウ葉エキス、フェルラ酸、リン脂質(PC、PS)、プラズマローゲンなどがありますが、それらは脳血流をよくしたり、脳の神経細胞にアミロイドβ(アルツハイマー型認知症の原因物質)が蓄積するのを抑制したり、神経伝達物質の補給や抗酸化作用があるものが大半です。

しかし、PQQはαシヌクレインの蓄積抑制にもはたらきかけることがわかっているのです。

このはたらきも本当にすばらしいと思います。

4非常に強い抗酸化作用PQQは通常、酸化型で存在し、それ自身では抗酸化力はほとんどありませんが、体内に取り込まれると還元されて、還元型PQQになります。

この還元型PQQには非常に強い抗酸化作用があるのです。

抗酸化作用とは、文字通り、「酸化(活性酸素のはたらき)を抑える作用」のことをいい、PQQのこの抗酸化作用も、脳機能改善作用のメカニズムの一つと考えられています。

ほかにも、PQQには寿命を延長させる作用があることが、線虫(シーエレガンス)およびヒト培養細胞を用いた実験で確かめられています。

「寿命を延長させる作用がある」と、さらっと申しましたが、「寿命を延長させる」ということですから非常に驚くべき作用です。

このことを世界で初めて発見し、その仕組みを明らかにしたのは、名古屋大学大学院の研究グループと久留米大学、愛知医科大学などでした。

彼らの共同研究によって、PQQが線虫の寿命を30%以上延長させることが確かめられ、その研究成果は英国科学雑誌「ジャーナル・オブ・サイエンス」にも掲載されました。

その他にも、うつ病の予防・改善や発達障害改善、血中LDL─コレステロール値改善などに有用であることを示唆する報告があります。

余談ですが、実験に用いられた線虫(シーエレガンス)とは体長約1㎜で透明な体をもち、自然界では土壌に生息している虫です。

成虫でもわずか1000個足らずの細胞しかありませんが、神経系、消化器系、表皮系など、ヒトと似た組織や遺伝子を持っているのです。

また、寿命が約3週間と短く、一度に多数の個体の寿命を測定できることや、突然変異体や遺伝子組換え体を容易に利用できるなどの利点があることから、哺乳類では長い時間を要する老化・寿命を研究する上で理想的なモデル生物として知られ、世界中で広く研究に利用されています。

事実、線虫の老化・寿命の研究から、私たちヒトにも保存されている重要な生物学的知見が数多く得られています。

PQQの効果

線虫は、こうした研究に欠かせない、とても有用な虫なんですね。

以上述べてきましたように、PQQは「ミトコンドリアの活性化作用」、「ミトコンドリア新生作用」、「脳機能の改善作用」を主な機能とする物質ですが、これらの機能は独立して機能しているわけではなく、相互に関連していると考えられます。