「減価償却資産」等、B/S内の移動

三つ目の例として、「減価償却資産」等、B/S内の移動があります。

例えば、手持ち現金で自動車や不動産を購入した場合、B/S内で残高の移動が発生して(資産勘定の「現金」から「固定資産」に科目が移動)、現金は減少しますが、P/Lには該当期の「減価償却費」部分にしか影響を与えません(※不動産の場合で、土地は減価償却しません)。

また、新商品開発などの「開発費」(繰延資産)をB/Sに計上した場合も、期中に現金を支払済みでも、P/Lには期中に該当する減価償却費部分にしか影響を与えません。

これらは、キャッシュアウトは単年度に発生しますが、経費の計上は減価償却期間に、各年度分を(後払いのように)費用計上するものなので、この点をしっかり理解する必要があります。

なお、減価償却を期末に一括して行う会社の場合は、期中の月次収支は、減価償却費の月次該当分も考慮する必要があります。またP/Lを黒字にするために、年度によって減価償却費を計上しないケースも見られますが、金融機関などにしっかり財務諸表を読み解かれると、その実態を明らかにされてしまいます(赤字を隠すつもりなら、意味はないと言えます)。

金融債務の(元金)移動

次に四つ目の例として、借入金の入金・返済があります。

借入金は、直接、現金残高に影響を及ぼしますが、「B/S内で発生する残高移動」であり、借入元金の変化はP/Lには関係ありません(※利息を払えばP/Lの「支払利息」として経費計上します)。

P/Lの「黒字」とは、現金が「残った」ことではなく、「赤字」は現金が「足りない状態」を意味することではありません。あくまでも「その期間中に計上すべき損益」の、ただの計算結果です。借入が必要になる理由は、単純に「現金が不足している」からです。P/Lでは分からないので要注意。

なお、借入がある会社にとっては、毎月の資金繰りの中で、金融機関への元金返済を含め、各種支払いで現金が不足する事態となり、さらなる借入が必要になる場合も発生します。P/Lが黒字であっても、資金がショートすると、最悪「黒字倒産」にもなりかねないので、注意が必要です。

また、決算書のB/Sでは、期末の残高しか記載されませんが、残高だけではなく、期中の「借入入金総額」と「返済総額」を別途分かるようにしておくと、資金移動の「規模の把握」に役立ちます。

ここまでの説明で、P/Lの利益とキャッシュが一致しないことは分かっていただけたと思います。