待機児童問題は解決へ向かっているのか
待機児童ゼロ作戦が大きくかかげられていた小泉内閣の後の、福田内閣の頃だと記憶しているのですが、知り合いの園長先生から聞いたお話があります。
その園長先生は保育園のある地域に居住して、長年園長を経験されている人でした。園舎の老朽化にともなって建て替え問題が起こったとき、理事会及び市と協議に入ったそうです。
園長先生としては地域社会の現実から、そして運営上のことから三〇名の定員増を主張されました。しかし、府は園長先生の主張を考慮することなく、倍の六〇名の定員増を提案してきたそうです。
その提案を市も理事会も受け入れて、六〇名の定員増で建築が進んでしまったという話をため息まじりに話されました。
このように行政が、地域や運営当事者の園長先生の意見を強引に抑えこんで、待機児童数を減らすことが進められました。
マスコミは表面的な数字を報道することで終わっています。このような数字上のことで、政治も行政も保育団体も済ませてしまっています。
現場は、保育士確保の困難と苦労をかかえるとともに、保育内容の質的低下を保護者や子どもに押しつける結果になっていることを申し訳なく思いながら、毎日を過ごしているのです。
待機児童問題は、数字上では改善が進んでいると考えることもできると言われていますが、データの取りかたによっては、逆に増えているとも言えます。
しかし、平成二七年から始まった新制度で、小規模保育所が増えていますし、数年前から供給元の多様化も進んでいるので、内容として多くの問題があるとしても数字上は保育所の定員増が実現していると、認めることはできると思います。
増え続けるチェーン保育園を見て思うこと
保育施設のチェーン化なども『保育崩壊』(小林美希著・岩波新書・平成二七年)にいろいろな事例が示されたように、怖ろしい現実が起こっています。
しかし、平成二七年七月に株式会社が経営・運営する小規模保育所を見学させてもらいましたが、スペースや設備上の問題があるとしても、園長先生は他の職員とともに懸命に保育しておられました。
このように現場の職員が良心的に努力しておられるところもあるように思います。