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時代に突き刺さる音楽を探そう
私は、父親の転勤と進学の関係で、小・中・高の12年間を九州で過ごした。
特に、高校時代は、1970年代前半の沖縄返還闘争も下火になり、中核派が、三里塚に集中して成田空港の管制塔を占拠して気勢を上げ、社会から孤立していた。左翼運動衰退時期だった。漱石ではないが、当時はまさに「伸縮自在の袋に閉じ込められ、錐で刺しても全く当たらないし穴も開かない……」という強い閉塞感に、社会全体が覆われていた。この雰囲気を多感な高校生が察知しない訳がない。
しかし、出口が見えない。何せ、TVはNHK以外は民放1局のみ。頼りは、深夜ラジオだった。『世界の中心で、愛をさけぶ』のドラマ版で、綾瀬はるかが勉強しながら傍らにラジオを置き、自分のリクエストした曲が掛かると、小躍りして喜ぶシーンなどには、懐かしく感情移入をしたものだ。
当時、唯一の慰めは、土曜の夜10時から40分間、NHKラジオで放送される『若いこだま』という番組だった。パーソナリティは、あの『rockin’on』編集長の渋谷陽一氏。そこで出会ったのが、ギターの森園勝敏が率いる四人囃子のアルバム『一触即発』である。
このアルバムは、プログレッシブロックとハードロック、西海岸ロックなど、当時の最高水準の要素を見事に融合させた、不朽の金字塔である。私はこのアルバムをテープが擦り切れる位聴きこみ、身体に染みつかせた。やるせない日々には、必ずこれを聴いて、勇気を奮い立たせた。
確かに、60年代のジミ・ヘンドリックスやジャニス・ジョプリンなどの音楽は、既成秩序からの解放をもたらした。その功績は多大だ。