デイサービスの仕事は完璧に役割を果たしたとは言えませんが、職場に対する不満は一切ありませんでした。それでも独立を考えるようになった背景には、自費出版で行った自己分析から見えてきた二つの答えがあります。

一つはナルコレプシーを抱えている以上、働き方にも制限が出てきてしまうということです。管理職へ出世してもエリアを管理している先輩の働き方は、各地にある事業所を車で回るものでした。車の運転が必要となると、その役割を果たせる自信がありませんでした。そのため、たとえこの先、出世したとしても、働き方という面で役割を全うできるかというと、現実的に考えて厳しいものがあると感じました。

もう一つは私自身にあります。ナルコレプシーのことについては異動や担当が変わる度に、スタッフの前で何度も説明しなくてはいけません。二つの職場ともに「ナルコレプシーなんだから〜」とスタッフから何度も言われることがありました。

介護現場では、働く目的が収入のためという方も多くいます。そんな方に「お客様に楽しんでいただけるイベントを企画しましょう」なんて、普段寝てしまっている(仮眠を取らせてもらっている)私に指示されても、余計な仕事を増やしたくないから、決まって返事は反対です。そのため、私と働く目的が異なっている方にいくら私の想いを語ったところで、やる気や、熱意は簡単には伝わらないのです。それどころか、「病気で配慮されてるんだから〜」といった声も聞こえてきました。先にも述べた通り、人は何をしても二:六:二に分かれるということもあるので、仕方ない側面もあります。とは言え、この先も同じように言われるのかと考えたら少し寂しく感じました。

それに私も人間なので「なんで病気を引き合いに出すんだ」「文句言う前に(しゃべ)ってないで仕事して」と、愚痴もこぼしたくなるのです。なによりそんな自分が本当に嫌でした。スタッフに対するストレスよりも、そんな愚痴をこぼしている自分がとても情けなく、嫌気がさし、格好悪く思えて我慢できませんでした。それこそスタッフに文句があるなら「それ以上のパフォーマンスで働け」「しっかりスタッフをまとめろ」と自分に対して感じていました。

このように悩んだ末に退職を決意しました。この決断は感情的に行ったと思われるかもしれませんが、冷静になって考えても「病気をコントロールしなくては働けない現実」「スタッフに文句を言う自分が嫌」ということを考慮しつつ、掲げる想いを達成するには、会社に頼りっぱなしでは難しく、独立した方がベターな選択というのは明確でした。

この介護の会社での経験、学んだことは本当に多く、就職してから退職までの間ずっと厳しくも気にかけてくださった先輩スタッフ、忙しい中で文句を言いつつも病気の配慮をしてくれていた事業所のスタッフの方々には本当に感謝しかありません。