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夢解き
「今度、どこかに遠出しようか。あ、砂糖は二つね」
私は、「砂糖を入れてあげる」とも何とも言っていないし、シュガーポットの位置は、私より海人の方が近い。(自分で入れろよ)と思ったが、私は黙って言われた通りにしてやった。「砂糖は二つね」と言葉にして言う分、煙草を銜えれば、近くにいる女がライターと灰皿を差し出すのが当然と思っている父よりマシである。私は、カップを持った海人の骨ばった手を、昨夜夢で見た父の、男性にしては細めの手と頭の中でくらべながら、
「結構、甘党なのね。そうねえ……海に行きたいな」
と答えた。
「海? もうそろそろ秋だけど」
海人は怪訝な顔をした。
「この間、海の夢を見たら行きたくなって」
「夢? 意外とセンチメンタルなことを言うんだね」
「そうかな。あんまりいい夢じゃなかったんだけどね。海辺で本を読んでリベンジしたいのよ」
「なんだい、そりゃ。俺、夢の話って興味無いんだよね。静真はしょっちゅう夢の話をするけど、鬱陶しいね。あんなもの、脳が見せるただの妄想なのに。俺は、見た夢はすぐに忘れることにしてる」
先日のコンパの時にも感じたことだが、海人は静真のことをあまり良くは思っていない……どころか、少し馬鹿にしている風がある。