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目の前で人が死ぬということ

次の日の夜勤、やはりOさんの熱は下がらずにいた。この日は日曜日で、しかも勤務しているはずの看護師がインフルエンザで早退してしまったので、看護師不在という状態だった。Oさんは何度熱を測っても38度以上はある。徘徊して呼吸も荒い。

そして夜を迎えた。遅番のS先輩が親切にも残業して、Oさんの様子を見てくれるということで少し安心だった。しかし、深夜Oさんが居室から出てきてサロンに倒れ込んでしまう。

Oさんは仰向けで、腕を上げ苦しそうに「ひゅー、ひゅー」と呼吸をする。聴診器を胸に当てるとゴポポと聞こえた。たまに嘔吐も繰り返している。僕はどうしたらいいのか、なす術なく側に寄り添っていた。すると突然Oさんが上げていた腕をパタンと床に落とすと、眼をカッと見開いたまま動かなくなってしまった。呼吸が止まったのだ。

「Oさん! Oさん!」

と大声で声掛けしても返事はない。聴診器でも心音は聴こえない。支援員事務室に待機していたS先輩に、

「Oさん呼吸停止! 心音なし!」

と大声で伝える。それと同時に心臓マッサージを行った。途中、隣の女性寮の職員が応援に来て心臓マッサージを代わってもらい、僕は人工呼吸をした。

訓練通り息を吹き込むと、戻ってくる呼吸音からはゴボボと聞こえてくる。その間S先輩は119番に救急要請していた。

十数分経っただろうか、救急隊員が来た。僕は隊員が心臓マッサージをするのを横目に呆然としてその様子を見ていた。それから少しして、隊員は首を横に振ると担架にOさんを乗せ救急車で病院に搬送した。