さあ、第二の人生の始まりだ
合格のお祝いに多くの人から、連絡があった。うち一人は、大変お世話になった上司である。食事に誘われた為、昼食をご一緒することになった。
彼は、私の勤務していた会社の子会社で社長を歴任し、退社後は研修会社に籍を置き、大学で進路指導等の講師を務め、依頼により企業の高齢者を対象にした「ライフ・プラン・セミナー」の講師も務めている。「ライフ・プラン・セミナー」は定年後の進路選択に対しての情報、知識を与え、今までの自分を振り返らせて、その中で自身の欠点、優れた点を記載させ、自覚させる。そして自らの進路を考えさせる。
会社側にとっては、継続雇用のことも考慮して、今までの役職としてのプライドを洗い流すことにより、入社時の新たな気持ちに立ち返らせて新たな目標意識を設定させ、将来の戦力化と組織融和を図る為のものである。従業員にとっては、高齢期の今後の進路について、いくつかの選択肢の中で自分に合った道を選択できるだけの資料提供が行われる。頼りにしている上司である。
上司と食事を取ったところは、立派な中華レストランであった。予約がされていたのだろう。係の女性が私たちを立派な席に誘い、私が座るために椅子を引いた。私は頭上の素敵なシャンデリアに目を奪われた。彼はいつもこのような洒落た雰囲気の中で食事をしているのだろうという予感がした。しばらくして、ビールとウーロン茶が運ばれてきた。彼は、私の目を見て、
「おめでとう。念願の社労士試験合格おめでとう」
乾杯をした。私は、合格したことを改めて喜んだ。
「合格した気持ちは。難しい試験のようだね」
「ありがとうございます。まぐれですよ」
と謙遜して言った。