有能な事務員

「奨励金」申請の為に何度も行くたびに県の窓口担当者は、初歩の段階から申請のポイントに至るまでを詳細に指導してくれた。ある日、申請が終わると、私を見て、

「今日で雇用期間が満了のため、私が申請を受付するのは最後になります。寂しいですね」

と言う。

「今日が最後ですか。今まで、順調に申請を続けてこられたのは貴女のサポートがあったからで、貴女がいなくなったら不安ですね」

「大丈夫ですよ。ほかの担当者が居ますから」

残念そうに私に言った。申請について、全く不案内の私を基本から指導してくれた。今では先輩社労士にも指導できる程度になっていた。私は、今後も彼女に指導を仰ぎたいと思い咄嗟に、

「できたら、携帯電話を教えてください」

彼女にとっては迷惑なお願いである。彼女は、一瞬ためらった。そして、しばらくして携帯電話番号をメモ用紙に書いて渡してくれた。

「はい。分からないことがあれば連絡ください」

携帯番号のメモを貰うと、なぜか嬉しくなる。箱根の件以来、女性運が良いのだろうか。

「ありがとう。連絡させてもらいます」

心を、ときめかせてお礼を言った。この件が縁で、当事務所の事務を任せることになった。大変有能な女性で、法科の有名大学を卒業しており、私が、なぜ彼女に事務を任せたかというと、彼女は、社労士に理解があり、「将来、社労士希望であり、社労士試験にトライし、社労士事務所に勤めたい」との希望を持っていたからで、その気持ちを応援したいと思ったからだ。

彼女の助けを得て、ますます「奨励金」の手続きに拍車がかかった。フォローの風を受けて業績は順調だった。事務所の拡大は、彼女のフォローでどれだけ多くのことが解決できたか知れない。彼女の助けは、私の不安を解消するだけでなく、顧問先の不安をも解消してくれた。