〈1度目の退職〉2002年

夫は、新入社員のころから10年、一部上場企業で働き、浮気事件以降、私の希望もあり、転勤になりましたが、会社には楽しそうに行っていました。

愚痴は言わなかったです。だから私も、会社は問題ないのだろうと思っていました。

マイホームも購入し、会社も順調、私も仕事が決まって順調に回っていたのですが……。

あるとき、夫は転勤を言い渡されました。そこは、新居のある場所からは通えない距離です。仕事内容も若干変わるという話でした。

ただ、私にしてみれば、転勤はサラリーマンにはつきものだし、このころから夫は何の頼りにもなっていなかったので、別に単身赴任になっても一向に構わないと思っていました。

だけど、夫は、

「この家から通えないのは嫌だ。仕事内容も変わるし。会社を辞めたい」

と言い出しました。上場企業、その安定の給与をあてにして家を建てたわけです。私も派遣社員だったため、安定した収入はありません。いつ派遣切りに合うかもしれないのです。

悩んだ挙句、結局働くのは夫。嫌な場所に無理やり通うことはかわいそうだ、本人が嫌だと思っているなら辞めることも仕方がないのかも……という結論に至りました。

ただ、家のローンはいまの給与水準を維持できなければ払えません。夫には、辞めるのは次の職場を見つけてからという条件を出し、私もいまより給料の良い仕事を探すことにしました。

それから数ヵ月後、すごく小さい会社でしたが、夫を雇ってくれるところが見つかり、私はそこの地元の小学校で講師の仕事を見つけました。二人で働けば、なんとか以前の収入は確保できるだろうという見通しを立てました。

そして彼は、最初の転職をしました。

新しい会社は、いままでのような大企業の事業所ではなく、個人経営の小さな会社。働く人は地元の人や、社長の親族一家。

夫は、いままで恵まれた環境にいたことをたぶんこのとき気づけばよかったのでしょうが、以前の会社でのことはもう彼には過去のこと、いまの会社への不満ばかりが募っていったようです。

家でも会社の社長やその娘の愚痴ばかり。大企業の恵まれた環境を離れ、親族経営の会社に入って、人の粗が見えるのは仕方のないこと。それでも自分が辞めたいと言ったのだから、それは自分の中で消化すべき問題です。