〈2度目の転職〉2006年
それから間もなく、夫は給料の面で不満があると言い、2度目の転職を決めました。決めました、と言うと、自発的に決めたような感じですが、いつも夫は何か決めるときは私に、「どう思う? どうすればいいと思う? 給料はどれくらいあればいいと思う? 場所は? 内容は?」何一つ自分で決められません。夫婦で相談するというよりは、私に丸投げするという感じです。
辞めたいならそれなりに覚悟がいるはずなのに、そんな深刻さがまったくなく、決定権を私に持たせて、自分は「どっちでもいいから、決めて」という態度。一家の大黒柱のくせに、まだ20年以上あるローンのことなどすっかり頭から消えています。職場を変われるということが、まるで楽しい行事のようにも見えました。
今回も私は、夫の代わりにいろんなシミュレーションをするのです。私の収入とあといくらあればこの家を維持できるのか、これからかかってくる教育費や生活費のこと、そんなことは何も考えてくれません。「辞めたい」と言うだけ。それだけ。あとは私が何とかしてくれるだろう……そう思っているように見えました。
ここでも私はいつものように、「しっかりしてよ! ここでウダウダ言っていても仕方ないでしょう! 辞めたいならまず行動。職探ししないと。きちんと今度こそ納得のいく職場を探して!」と発破をかけるのです。年齢的にも、これが最後の転職になるだろうと思いました。
地元で探しましたが、田舎で人口も仕事も少ない上、転職も2度目となるとなかなか良い条件の仕事は見つかりません。
そこで、マイホームのある土地を離れ、人の多く集まる都会の技術者向けの転職支援センターに登録し、良い条件の会社を探し始めました。探し始めました、と言うと自発的なように聞こえますが、このときも私は彼に頼まれ、一緒に登録に行きました。まるで、母親に付き添われている子どものようです。