高校生活に慣れたころ、隣の席の飯田強(いいだつよし)が、亜紀に数学の問題について尋ねたら、真一は嫉妬した。

「おい、飯田、うるせいぞ」

数学の基礎を強に教えているだけだったので意外だった。

「なんで怒るの、山下君、これは数学の基本よ」

真一は、なおさら憤った。

「うるさい、俺は、今日は、機嫌が悪いんだ」

亜紀は、何で真一が気分を害しているのか、疎かった。

真一は、亜紀の様子を窺いながら聞いた。

「田中、おまえ、何時に下校するんだ」

「部活が終わってからだから、午後六時ごろになると思う」

「今度、一緒に、マクドナルドのハンバーガーを食べに行かないか」

「えっ、デートに誘っているの?」

「いや、友達の関係でいいんだ。食事に付き合ってくれないか」

「いいよ」

思っていたよりあっさりと提案を呑んだ亜紀に、真一は喜びの表情を隠せなかった。

「実は、終日、マクドナルドでは、ホットケーキセットが三百二十円で食べれるんだよ」

「へぇー」

「行こうよ」

「うん、分かった」

亜紀と真一は、お互いに頷き合った。

週末、部活が早く終わったので、亜紀は真一と待ち合わせの約束をした富山駅前のユニーというデパートの前まで向かった。真一は、早くから来ていたようで、約束の時間には、立って待っていた。

「おー、来てくれたのか」

「当たり前でしょ、約束は守るから」

「じゃぁ、マクドナルドへ行こうぜ」

「うん」

真一と亜紀は、道を恋人同士のように並んで歩いた。

「腕が、寒いな」

真一は名言を吐いた。

「腕を組んで欲しいってこと?」

「そう」

「いやよ」

「ちぇっ、つまらない」

そうこうしているうちに、マクドナルドへ着いた。