これに加えて、日本人が持つ民族的な気質も各時代の社会情勢と併せて英語を苦手とする風潮に拍車をかけたのではないかと考えています。礼儀正しさ、真面目、時間を守る、大人しい、我慢強い、集団や周りの行動を重視する、横並びの考え、内向き、恥ずかしがり、自己主張が弱いなどを日本人の気質として挙げる方が多いと思います。

確かに、これらの気質の中には海外で高く評価されている面もあり、日本人の国際的な地位の向上に寄与している面もあるのですが、外国語学習に関して言えば、残念ながらマイナスに作用している部分があることは否めません。

昭和30〜50年代の企業社会を例に考えると、この当時は集団就職や人材育成方法など横並びの集団という意識が強かった時代で、異端児は扱いにくいという空気もありました。つまり、幹部候補とそれ以外の一般社員との住み分けが明確にあった時代だったのです。高度経済成長の真っただ中で、日本国内のみで生活や社会的営みが完結するのであれば、無理に気質を変える必要はないでしょう。

ですが、国際化社会の現代では「沈黙は金、雄弁は銀」では生き残れないのです。むしろ、自分の意見や核となる技能を持っていないと、大学や企業でも戦力にならなくなります。近頃、留学を希望する高校生・大学生が減ってきているという記事を新聞でしばしば見かけます。

その原因として、少子化や授業料の値上げ、リーマンショック後の経済の悪化、就職活動の時期の違い、国内の大学の支援の薄さ、海外の治安の問題、若者の内向き傾向など多くの理由が挙げられるのですが、逆に今の若い人の方が海外に飛び立つ意欲は段違いに高いと感じます。

そのことを示すデータとして、2019年の外務省の海外在留邦人数調査統計がありますが、この統計で永住者と長期滞在者の数が2018年に139万人を記録しました。これは年々増加していて、今後もその数については伸びていくことが予想されます。