一陽来復 一発逆転ホームラン

長く厳しい冬の後には必ず春がやって来る。

まさに今の末娘と私に贈りたい言葉。娘は高校3年生、受験勉強も佳境だ。

「上の3人にお金を使いすぎて無くなったでしょ。だから、塾行かないで自分でやる。」

娘は殊勝なことを言い、通信講座さえも取らずに家勉している。『スタディサプリ』という無料のアプリをダウンロードし、家のプリンターで問題をコピーし、居間でねじり鉢巻き猛勉強。

私の持論は、家で勉強できる子に塾や予備校は不要。だから彼女の姿勢こそあるべき姿と大歓迎。

家計にも優しいし一石二鳥。4人の中で彼女だけが県立高校。自分が一番コスパの良い娘であるということが自慢でもあるようだ。4人目はさすがに逞しい。孝行娘を前に4人産んだ甲斐があったと満足げに目を細める私だ。

そんな娘は、推薦やAOで志望校に決まっていく友人に囲まれ不安で仕方ない。

「ヤバい、どうしよう、不安すぎる。大丈夫かな?」私は彼女の問いに答える代わり「ママもヤバい。やっぱり無理かも。ほんとに書けるかな? 出版なんて早まったかな?」

娘たちによく指摘されるが、私は人の話を聞かない。そして喋りたいことだけを勝手に話す。だから会話がなかなか成立しない。

でも今は非常事態、不安に駆られる娘に何かを言わなくてはと「ママ、不安に負けないために、とにかく書き続ける。だから朱里も勉強し続けて」。我ながら母親らしいナイスなアドバイスを送ることが出来た。

そして彼女の手を握り「一緒に頑張ろうね。春はすぐそこだよ」。大きな声で励ました。

娘と私、あとひと月は一緒に戦う戦友だ。