パーキンソン病は腸内から始まる?

パーキンソン病は、脳の黒質にあるドパミン神経細胞が急激に減少し、神経伝達物質のドパミンが不足することにより発症する病気で、アルツハイマー型認知症についで多い進行性の神経変性疾患です。

現在の医学では根本的な治療は困難で、ドパミン神経細胞が減少する原因もわかっていませんが、パーキンソン病患者の脳内では、レビー小体という異常なタンパク質の凝集体が見られ、その主成分がαシヌクレインというタンパク質で、それがパーキンソン病発症の重要な鍵を握ると考えられています。

また、意外に思うかもしれませんが、パーキンソン病は、腸内、特に「虫垂」から始まる可能性があることが近年の研究で明らかになってきました。虫垂とは盲腸の先端から突き出た直径4~5mm、長さ5~7cmほどの細長い管状の組織で、虫垂が細菌感染を起こし、中が詰まってしまった状態を「虫垂炎」といいます。

不要な臓器といわれることも多い虫垂ですが、腸内細菌の貯蔵場所で免疫反応と関連があり、パーキンソン病に関連する主要タンパク質「αシヌクレイン」が蓄積する場所であることがわかってきたのです。

アメリカの研究チームが、スウェーデンとアメリカの患者データベースを調査した結果、成人早期に虫垂を切除した人のパーキンソン病発症リスクが、切除していない人よりも19%低いことを突き止め、2018年10月31日、アメリカの医学誌「サイエンス・トランスレーショナル・メディシン」に論文を発表しています。

さらに驚いたことに、パーキンソン病は、古くなったミトコンドリアを除くことができなくなったことで起こる病気であることが、これも最近の研究でわかってきました。腸の話はこのくらいにして、健康の鍵を握る「ミトコンドリア」についてお話しします。