宗教建築は、その宗教の理念と理想を表現していると言われます。天井のドームは宗教的宇宙を表現し、ゴティック様式の尖塔は天上への憧れを意味します。
西のローマ、東のビザンツ、そしてイスラムと、それぞれの教会建築は、個性ある外観を持っていますが、ギリシャ、ローマを継承しながら東方的色彩の濃いビザンチン様式の教会建築に美しさをより強く感じます。
白い壁と緑のドームの組合せ、建造物の外壁の装飾など、ニコライ堂は恰も大きな芸術作品を見るかのような建物です。
駒場 明治・大正の面影もとめて
谷間にある渋谷の町は東京でも五指に入る賑やかな繁華街ですが、その谷間から西へ上った松涛と言う町は、これまた東京でも有数の閑静な高級住宅地区であり、大正から昭和にかけてハイカラ好みのお金持ちがビクトリア様式の家を建てたところです。
駒場はその松涛と山手通り一つ隔てた隣りにあり、ここにも、しゃれた西洋風の建物が未だ幾つか残っています。その中で一際目立つ豪華な建物が旧前田侯爵邸の洋館です。
敗戦後一時占領軍が接収して使っていましたが、今は昭和初期の歴史的建築物として公開されています。館内に入ると英国調の家具調度品を備えた部屋が多数あり、明治貴族の生活ぶりが分かります。
旧前田侯爵邸は、本郷にあった加賀百万石の前田藩の屋敷跡を東京大学に割愛したとき、敷地交換でこの地に移転してきたので、その敷地は大変広く、邸宅の門柱には「駒場公園」の表札があるように、今は敷地全域が公園になっています。
洋館の裏側には和風の屋敷があり茶会などに使われていますが、その和邸へ行く途中に日本近代文学館への道があります。日本近代文学館は、戦後、高見順と伊藤整が明治以降の日本文学の貴重な資料を保存展示するために創設した博物館です。
明治・大正時代の作家の写真や直筆の原稿が展示されています。旧前田侯爵邸と日本近代文学館のある駒場公園は、二つの東大駒場キャンパスに挟まれた位置にあり、渋谷駅のバスターミナルからバスで十数分で行けます。バス停は代々木上原です。