俳句・短歌 短歌 2021.08.02 短歌集「命の雫」より三首 短歌集 命の雫 【第1回】 田中 祐子 癌と甲状腺機能低下症を患いながら、戦争の悲惨さ、 命の重さ、生きることの煌めきを詠み続ける92才の歌人。 待望の短歌集第3弾。 この記事の連載一覧 次回の記事へ 最新 色褪せし芝生を照らす秋の日の闌たけて夕べの広きグラウンド お手玉に入れればシャカシカと音を立てそう茶色のバラの実 ハガキ一枚来れば楽しき日とならむ明るさが吾われを包む真昼間
小説 『再愛なる聖槍[ミステリーの日ピックアップ]』 【新連載】 由野 寿和 クリスマスイヴ、5年前に別れた妻子と遊園地。娘にプレゼントを用意したが、冷め切った元妻から業務連絡のような電話が来て… かつてイエス・キリストは反逆者とされ、ゴルゴダの丘で磔はりつけにされた。その話には続きがある。公開処刑の直後、一人の処刑人が十字架にかけられた男が死んだか確かめるため、自らの持っていた槍で罪人の脇腹を刺した。その際イエス・キリストの血液が目に入り、処刑人の視力は回復したのだという。その槍は『聖(せい)槍(そう)』と呼ばれ、神の血に触れた聖(せい)遺物(いぶつ)として大きく讃えられた。奇跡の逸話(…
小説 『紅の脈絡』 【第5回】 水無月 慧子 切り開いている「道路」という名の地獄道の完成予想図を見て土俵に上がる直前のように目を輝かせ… 千鶴が口を開いた。「何人殺めたのかは知らないけれど、それ以外に道がなかったんでしょう? あなたの生真面目で愛妻家なところから考えると、そう思えるわ」虎太郎の目に涙が浮かんだ。ゆきも涙を流していた。「千鶴。僕が思うに虎太郎くんは正当防衛だ」「やっぱり!」ゆきが虎太郎の大きな手に、自分の痩せた手をのせた。「何があったのか、想像はつくわ。ゆきさんは美人だもの。虎太郎さんは、ゆきさんを暴漢から守るため、…