生きがいを持つ

家族は、私の考えを支持してくれました。ただ、婦人科は嫌であっても、内科で時々診てもらうようにと言われ、私はそうする事にしました。

カウンセリングの先生も、私のあり方を否定せず、見守って下さいました。今、思い返しても、本当に有り難い事だったと、感謝せずにはいられません。

私は、毎日を明るく過ごしたいと思い、大好きな花に関わりたいと思いました。

それで、大学時代にクラブ活動で習っていた嵯峨御流の華道を、もう一度習う事にしました。そして、辻井ミカ先生という、本当に素晴らしい先生に出逢えました。

嵯峨御流は、他の流派とちがい、家元制ではなく、京都嵯峨にある門跡寺院大覚寺がお家元です。

大覚寺は一二〇〇年前、嵯峨天皇の御所で、天皇自らが菊を瓶に挿され、花を生ける心を推奨されました。

その御心「命の大切さ、調和、平和」を願われた嵯峨天皇を、いけばなの始祖と仰ぎ、天皇と親交の深かった空海の教えも相まって「花即宗教」の精神で、引き継がれています。

この、仏教の教えを根底に持つ、嵯峨御流との「ご縁」により、私の心は、平安を取り戻し始めました。

辻井先生に、毎週いけばなを習い始め、私の生活はイキイキと輝きだしました。

春には、桃、桜、ストック、薔薇ばら、菜の花、アイリス、フリージア、チューリップ、カーネーション、芍薬しゃくやく燕子花かきつばた、等々を。

夏には、紫陽花あじさい向日葵ひまわり百合ゆり、トルコ桔梗ききょう、アガパンサス、檜扇ひおうぎ 、クルクマ、アスター、等々を。

秋には、菊、撫子なでしこ、桔梗、女郎花おみなえし、ホトトギス、コスモス、竜胆りんどう孔雀草くじゃくそう、等々を。

冬には、梅、椿つばき山茶花さざんか寒桜かんざくら蝋梅ろうばい、水仙、等々を。

あげればキリがないくらい、沢山の花を生けました。そして、お正月には松を、お盆には槙の木を生けました。

花を生ける時、無心になれ、季節を感じ、私は自分が自然の一部である事を実感し、幸せになれました。

嵯峨御流には、盛花もりばな瓶花へいか生花せいか荘厳華しょうごんか文人華ぶんじんか心粧華しんしょうか景色けしきいけ等、様々な生け方があり、その技と心を体得するには、一生かかっても足りないと思われました。

私は、楽しく、いけばなの勉強を続けました。

やがて、師範のお許しを頂き、私は、生きて、好きな道を登ってゆける幸せを、本当に有り難く思い、感無量でした。

人が生きていくには、心から楽しめ、無心になれる、生きがいを持つ事が、本当に大切だと思います。