セグメンテーションとフォーカシング

大枠の数字を見て私が行ったことは、その数字をセグメンテーション(分類)し、フォーカシング(深掘り)することです。数字は必ず何かの積み重ねによって構成されています。それを具体的に分解し、なおかつ人と紐づけてセグメントを行う。そして効果的なものにフォーカス(深掘り)して対策を行っていました。

なぜセグメンテーションとフォーカシングに着手するかと言いますと、これを行うことによって効果的な対策を打つというよりは、無意味な売り上げ対策や利益対策が浮き彫りになり、黒字化するにはお金のかかる施策が必要なのか、お金をかけなくても売り上げが見込めるのかをイメージできるからです。特に赤字を脱却させることに関してはコスト面管理ありきの施策が重要で、ただ単に売り上げを伸ばすより敏感にならなければなりません。その点でどういうお金の流れで売り上げを伸ばすのかという初めのイメージが将来の指針となります。

単純に店の売り上げを上げたいと思った時に、何を想像するでしょうか。広告を打ったり、SNSマーケティングを行ったり、新商品を開発したりというのが一般的です。ですが、これらの施策を現状の数字を分解せずに煩雑に行ってしまうと、何が効果的なのか分からなくなってしまいます。

最悪の結果、間違った施策をしてしまい、高額なお金を払って全く効果がないことをやってしまうおそれもあります。これは飲食店に例えると、現時点で1日100名様来られているお客様を、あと10名様増やせば赤字を解消できる場合です。現状のお客様100名と、集客したいお客様10名が表面上の数字です。これを人に紐づけると、性別、年齢、国籍、仕事などいろいろなパターンでセグメントができます。

仮にこれを新規とリピーターで分解してみます。新規のお客様の割合が80%、リピーターのお客様が20%だったとします。ここで読み取れることは、リピーターの割合の少なさから、一度ご来店されたお客様がまた来たいと思う店にはなっていないということ、すなわち店起因で売り上げが伸びずにいることが仮定されます。

ここで売り上げを伸ばすための効果的な対策は、お客様がまた来たいと思えるお店作りを行うことであって、新しいお客様を獲得することではありません。高額な広告を打ったとしても、お客様が定着しないことには永遠に無意味な広告料を払い続けることになってしまいます。

数字のセグメントを理解していないと、このような本来は不要な対策をしてしまうことになります。これを行うことにより、黒字化のためにお金をかけなければならないのか、お金をかけなくてもできるのかの大枠を捉えることが可能です。

英会話教室も飲食店で行っていることと同じ手法で分析しました。その結果でいうと、この英会話教室はそもそも既存の顧客数が少なく、新規のお客様が必要でした。しかし同時に、莫大な費用をかけるほどではないと仮定しました。それはお客様の継続率(リピーター率)が高かったからです。

通常、英会話の継続率は2カ月程度ですが、ほとんどのお客様が3カ月以上継続されていました。これは単純に考えると何かしらの要因で中身が良いことの表れだと仮定しました。この段階での私の結論は、開業して7カ月で認知不足はあるものの大いに黒字化が見込めるというものです。匿名でのやりとりという具体的な数字や現状を聞くことが難しい状況の中で、私はこのような仮説を立てながら黒字化は可能かどうかを模索しました。

さらに私のその後の方向性として、融資を受けずに運営するつもりでしたので、今すぐサラリーマンを辞めて英会話教室の運営に専念するのではなく、サラリーマンを行いながら運営をしていく方向が良いと判断しました。それを踏まえたうえで、実名交渉に臨みました。