アルツハイマー病の予防と治療
予防法の試み
認知症の中で一番多いのがアルツハイマー病です。
1975年頃まで、アルツハイマー病は治らないと考えられていました。しかし、高齢化とともにアルツハイマー病の人が著しく増えたため、予防や治療の必要性が益々高くなりました。
最近、多数の人を対象にした長期にわたる研究の結果、アルツハイマー病になりやすい危険因子を除くことによる予防効果が証明されるようになりました。また、アルツハイマー病の発病機序がほぼ明らかになったため、その過程を止める予防薬が開発されています。
アミロイドβの産生を止めるとか、分解を促進する薬が作られ、MCIの人に投与して、アルツハイマー病の発病が抑えられるか否かが検討されています。
アミロイドβに対するワクチンや炎症を抑える薬、タウ蛋白を介する予防薬など多くの試みが進行中です。この中からアミロイドβに対する抗体であるアデュカネマブの効果が日米で治験により検討されています。
アデュカネマブはアミロイドβに対する抗体であり、脳内のアミロイドβと結合して、アルツハイマー病になる危険を予防するための薬です。
昨年、アメリカで効果が軽度認知機能障害(MCI)の人を対象にアルツハイマー病への悪化が認知機能の低下を指標にして試験されました。
その結果、アデュカネマブがアルツハイマー病になることを予防することが明らかになりました。そのため、日米で試験を進めて、その効果を確認して薬としての承認を政府に申請する予定です。
薬による治療
常日頃見られる歩行、会話、睡眠、記憶、痛み、怒りなどは神経の働きにより左右されます。刺激の神経から神経への伝わり方は神経の間を橋渡しする物質が調節しています。
神経の伝わり方が異常になって起こる統合失調症、パーキンソン病などの病気や激痛、憤怒、不眠は神経伝達物質を介する治療をすると暮らしやすくなります。アルツハイマー病では記憶障害が主な症状です。記憶障害のために、ありもしない考えを持ち、誰かに物を盗られたと疑いをかけることがあります(妄想)。
そこで、記憶が良くなると、妄想などの異常な思いや徘徊などの異常な行動も減ることがありますので、まず記憶障害を良くすることです。記憶を良くする薬がアルツハイマー病に効くことが証明されました。
アセチルコリンという神経伝達を高める物質が、アルツハイマー病の人の脳ではできにくいことが分かりました。そこで、アセチルコリンを壊す働きを止めるドネペジルという薬を日本のエーザイ株式会社の杉本八郎博士が見つけました。